高校生のためのエッセイ
永遠志向 第1回 今を生きない

荒井恵理也
高校生聖書伝道協会(hi-b.a.)スタッフ

 「今を生きない」―――これは半分冗談、でも半分は本気で、今の高校生に伝えたい重要なキーワードです。

 「今を」生きているといえば聞こえがいいのですが、多くの高校生は「今しか」生きていないんじゃないかと思います。

 今のクラスで友だちとうまくやっていくことは死活問題で、今、こじれてしまっている人間関係を修復するための具体的な人の助言は必要だし、今、寂しいから彼氏彼女がほしいという気持ちはわかりますが、「今が楽しけりゃいいじゃん」という、ドラマでしか聞かなそうな言葉を実際に耳にしたときには正直いって、あせりました。

 自分の人生設計を持っている高校生もいるし、計画性を持って日常生活を送っている高校生もたくさん知っています。でも、永遠への備えはそれで本当に大丈夫? と問いたくなる時があります。


 「主イエスがなされたみわざ、また語られたことばには、いつも前方への(つまり、将来あるいは終末を臨み見る)視点が示されていました」(三十一頁)という一文が『キリストの恵みに憩う』を読んでいて、心に留まりました。この本は、みことばへ戻ることを促しています。

 みことばに戻るためのデボーションは地道な作業で、忍耐が要求されます。しかし、デボーションをすることによって、永遠という視座に立つみことばから御国の視点が与えられます。そこから見えてくるものは、永遠へと向かう神の壮大なビジョンであり、そのどこかに配置されている自分の姿です。

 それが、高校生が切に求めているもの、しかし現代人が見失っている未来と希望です。それこそが、紛れもなくみことばが指し示す永遠です。

 最後に著者は、ご自身が見たぶどう園にあるぶどう棚のお話しをもって本を締めくくります。その結末に深い深呼吸とともに、「永遠」への期待を感じながら読み終えました。永遠の備えとして、みことばをむさぼるのとともに、この本の一読もおすすめします。