21世紀の伝道を考える 14 ビジネスマン伝道(2)
黒田 禎一郎
ミッション 宣教の声 主幹牧師
「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。」(マタイ11・28)
祝福の奥義
大阪で始まったビジネスマン伝道には、いくつかの祝される要素があることが分かります。まず第一に、それは伝道のアクセスポイントです。これまで、教会は教会内へビジネスマンを迎えようと努力してきました。しかし、教会の多くは婦人や子どもが多く、壮年の男性には居場所を見つけるのは容易ではありませんでした。彼らの目線で見ると、教会は入りにくい所でした。そこで、私たちの月曜礼拝やセミナーは、会堂ではなくビジネス街のレストランやホテルなどを利用しています。これらの会場はビジネスマンにとって、抵抗なく出入りしやすい場です。
第二は、信徒中心の伝道活動であることです。教職者が先導する伝道会ではなく、実社会の最前線で戦っているクリスチャンの企業戦士が企画しているのです。そこからは、恵まれた実が生まれています。多忙なビジネスマンが、時間を調整し、喜んで伝道奉仕している姿には心打たれます。これはビジネス経験の乏しい教職者が、講壇から語るメッセージより、はるかにインパクトと説得力があり、効果的です。
初代教会時代、ピリポやステパノ等の信徒伝道者、またアクラとプリスキラ等のテントメーカー伝道者たちは、専任の教職者たちに比べて決して遜色はありませんでした。むしろ仕事を通して得る未信者との接点を生かし、積極的に伝道しました。このことは使徒時代、福音宣教が爆発的に進展した理由のひとつでしょう。ですから、信徒伝道は初代教会から学ぶ聖書の原則ではないでしょうか。
第三は、やはり祈りの運動です。これは決して新しいことではなく、基本中の基本です。伝道の成功のために技術的改良をはかることも大切ですが、祈りは最重要です。祈りはすべてのミニストリーの原動力です。
約三年半前に始まったインターナショナルVIPクラブ大阪のスタート時、一年間表立った働きはしませんでした。ビジネスマンが毎週木曜日、出勤前の午前七時に集まり、神の祝福を熱心に祈り求めました。それが現在関西だけで十三箇所にも広がっています。
このように主の働きの背後には、確かに祈りがあります。神は祈りを通して働き、聖霊を注ぎ、上よりの知恵を与えてくださいます。そこに、聖書の原則を再発見することができます。
新しい皮袋
冒頭の御言葉のように、主イエスが頭である教会は本来、疲れたビジネスマンに回復と癒しを与えることができる所です。そして様々なニーズに答え、重荷を取り去ってあげることができるはずです。すなわち教会はビジネスマンの必要を満たす「受け皿」になる必要があります。私はそのための教会の姿勢として、次の二点を考えることができるのではないかと思います。
第一に、教会が神との関係で生きているということです。熱心さのあまり、クリスチャンは律法主義的傾向になりやすいものです。主への熱心さは結構なのですが、逆に他人に対して裁きの心が浮上するならば問題です。
しかし律法ではなく、キリストにある自由で真に解放されるならば、そこには生き生きした姿が生まれるはずです。教会の礼拝と交わりに、生きておられる主が介入されるならば、その場には世の交わりでは得られないものがあり、そして教会が退屈ではなく新鮮で感動的な場となるはずです。
第二に、教会は聖書を実生活に適用する道を教えることです。聖書は単に紙上の教えではなく、確かに生きて働かれる主が教え導いてくださるものです。教会が厳しい現実を生きるビジネスマンの疲れ・失望・不安を取り除く生きた証しを語りつづけるならば、ビジネスマンは集まるはずです。なぜなら、そこに心の癒しが起こるからです。
私が月曜礼拝、ビジネスセミナー、ビジネス講演会等で心がけていることは、みことばの実生活への適用です。実際、ビジネスマンが知りたい点は理論ではなく実生活で活用できるノウハウではないでしょうか。
そのような意味で、教会が新しい皮袋となりビジネスマンの「受け皿」となるならば、日本社会は大きく変化するものと信じます。私は「二十一世紀の伝道を考える」とき、どうしても教会は「新しい皮袋」(マタイ9・17)になる必要を覚えるのです。