21世紀ブックレットシリーズ50巻刊行
―キリスト教界と日本社会の歴史をたどる ◆編集長より
新たなブックレットシリーズを見据えて
長沢俊夫
いのちのことば社出版部
一九九七年四月、東京基督教大学共立基督教研究所の協力と助言をいただき、「ライフブックレット」を引き継ぐかたちで、「21世紀ブックレット」は始まった。最初に出版されたのは、共立基督教研究所所長(当時)櫻井圀郎氏の『日本宣教とキリスト教の用語』と、明治学院学院長(当時)中山弘正氏の『戦争・平和・キリスト者』の二冊。ブックレット編集部が特別に設置されたわけでなく、どこまで続けることができるのか皆目わからない船出だった。
今出版されているものには掲載されていないが、当初は巻末に「〈21世紀ブックレット〉刊行のことば」が記されていた。このシリーズの趣旨である。全文は長いので、その冒頭を。
「『二十一世紀ブックレット』は、その名のとおり、来るべき新しい世紀に向かうキリスト教界に求められている提言、論考、情報を広く提供したいという願いのもとに刊行されるブックレット・シリーズです」
今日的な問題を扱うよう心がけてきたが、長く読み継がれ、版を重ねているものもいくつかあるし、改訂して、出し直したものもある。
そして、このシリーズの顔ともなっているのが、毎年夏に長野県上田市の霊泉寺温泉で開かれている「信州夏期宣教講座」の講演・発題集。日本の教会が背負っている負の遺産をしっかり見つめ、これからの宣教のありようを考えるというのがその趣旨である。初め二年分を一冊にしていたが、同講座のエクステンションが他の場所でももたれるようになり、一年分で一冊出版することになった。ある年は、その内容と分量からしてブックレットに収まりきれなくなり、『韓国強制併合100年』『日本の「朝鮮」支配とキリスト教会』は特別版となったこともある。
二〇〇三年三月に出された『なぜ、「君が代」を弾かなければならないのですか』(#19)は、「日の丸・君が代」の強制が進む教育現場の現状を報告し、教師たちの苦悩が記されている。この問題は『この国に思想・良心・信教の自由はあるのですか』などの「思想・良心・信教の自由研究会」による新たなブックレットシリーズとなって各方面から取り上げられるになったが、今年五月、『信仰の良心のための闘い』(#48)で深刻化する今日の状況を紹介している。
日本福音同盟神学委員会編『原発と私たちの責任』(#49)、信州夏期宣教講座編『東日本大震災から問われる日本の教会』(#50)は、東日本大震災と原発事故を扱ったものであるが、震災から一年経った二〇一二年三月から、日本の原発の状況と被災現場を報告し、どう取り組んでいったらよいかを具体的に考える「3・11ブックレット」も新たに発刊し、本シリーズの姉妹編として七冊を数えている。
「21世紀ブックレット」というシリーズ名は前世紀につけられたもので(といってもまだ十数年前だが)、新鮮味を欠いてきたこともあり、新しいブックレットシリーズを考慮中である。読者の方々にもぜひ案をいただければ幸いである。
21世紀ブックレットの歩み
#1『日本宣教とキリスト教の用語』
#2『 戦争・平和・キリスト者』
#3『アジアの教会と手をつないで』
#4『今日における「霊性」と教会』
#5『中国・韓国・日本の教会』
#6『日本人キリスト者から キリスト者日本人へ』
#7『脳死と臓器移植』
#8『現代に生きるキリスト者と「霊性」』
#9『「昭和館」ものがたり』
#10『21世紀の平和を考える』
#11『沖縄は問いかける』
#12『敬虔に威厳をもって』
#13『愛 いのち 平和』
#14『「日本」とキリスト教の衝突』
#15『日本宣教と天皇制』
#16 『福音を生きる』
#17『「信仰」という名の虐待』
#18『教会がカルト化するとき』
#19 『なぜ、「君が代」を弾かなければならないのですか』
#20『キリストの神性と三位一体』
#21『説教で何が語られてきたのか』
#22『「新遊就館」ものがたり』
#23『望みの朝を待つときに』
#24『新しい歌を主に歌え』
#25『日本宣教の光と影』
#26『「健全な信仰」と「カルト化した信仰」』
#27『これからのキリスト教』
#28『キリスト者の時代精神、その虚と実』
#29 『心病む人々に教会ができること』
#30『主の民か、国の民か』
#31『ウェストミンスター小教理Q&A107』
#32『喪失が希望に変わるとき』
#33『私の「愛国心」』
#34『終末を生きる神の民』
#35『「セカンドチャンス」は本当にあるのか』
#36『それでも主の民として』
#37『“「信仰」という名の虐待”からの回復』
#38『教会の戦争責任・戦後責任』
#39 『礼拝における讃美』
#40『キリスト者の平和論・戦争論』
#41『賛美歌に見られる天皇制用語』
#42『和解と教会の責任』
#43『「バルメン宣言」を読む』
#44『霊の戦い 虚構と真実』
#45『今日のキリスト教教育の可能性を問う』
#46『日本の植民地支配と「熱河宣教」』
#47『これからの福祉と教会』
#48『信仰の良心のための闘い』
#49『原発と私たちの責任』
#50『東日本大震災から問われる日本の教会』