CD Review ◆ CD評 「かけがえのないもの」

CD「かけがえのないもの」
西由起子
声楽家、フェリス女学院大学非常勤講師

帰ってきたリラ・サウンド 心に染み入る賛美

 リラの賛美はどこかで必ず聞いたことがあるはず。皆で口ずさめる親しみやすさから、多くの教会で歌われているからだ。メンバーの一人、塚田牧師の一時帰国を機に録音された4thCD「かけがえのないもの」は実に五年ぶりの待望のアルバム。期待どおり変わらない優しい言葉とサウンドにあふれている。

 今や日本のプレイズのスタンダードと言ってもよい「わたしたちのこの口は」は私が初めて出会ったリラの賛美だった。この賛美はクラシック畑の私にもごく自然に入って来たと同時に「私の歌は祈りでありたい」という私自身の願いを再び思い起こさせてくれた。そして祈りの言葉すら出て来ないような時、祈りの言葉の代わりとなり私を主に近づけてくれた。

 リラの賛美には一貫して、私たち誰もが感ずる弱さが正直に歌われている。今回のアルバムも「たとえ今がとても辛くて祈れなくなったとしても」という言葉で始まっている。だからこそリラの賛美を聴くと「振り返るとそこに主がおられる」と素直に思えるのだ。それが心に自然に入ってくるのは、胸がきゅんとするようなリラ・サウンドに加え、隣りのお兄さんとお姉さんがピアノの回りに集まって歌っているようなフレンドリーなハーモニーによるのだと思う。

 東京基督教大学で共に学んだ六名(女性四名・男性二名)がリラを結成して十五年。メンバーは現在、国内外それぞれの場で献身者として主に仕えている。このCDでは、遣わされたブラジルの言葉や日系ブラジル人の出身地に多いという沖縄のサウンドが聞こえるのも興味深い。またクリスマスをテーマにした愛らしい賛美も三曲収録されている。

 今回のアルバムにはメンバーの従弟でリラ全員にとって弟のような存在だった真理さんへのメッセージと、一年半前に真理さんが二十六歳で天に召された日に作られた「見つめながら」も収録されている。真理さんが命の限り見つめ続けた「かけがえのないもの」をリラの賛美と共に静かに思い巡らせてみたい。このCDは「かけがえのないもの」を主とゆっくり語り合う時を導いてくれるはずだ。