CD Review ◆ CD評 「こころから」

CD「こころから」
碓井真史
新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授スクールカウンセラー

ソプラノ歌手のポップな賛美があなたに春の陽射しを

 じんと冷たい冬の朝、今このCDを聴いている。良い音楽は、私たちの心の底にひそんでいるものに光を当てる。だから、音楽を聴きながら、涙が流れることがある。笑顔がこぼれることがある。

 吉村美穂は歌う。私たちの心の叫び、心の重荷について。主の恵みが、今はわからないという時があると。

 音楽は心を癒す。だが、ただ耳ざわりが良いだけの歌に本当の癒しはない。心が締め付けられる悲しみ、倒れてしまいそうな苦しみ、世界中の感傷が押し寄せてきたような淋しさ。その現実を通って、初めて癒しがある。それは、私たちの救いのためにはイエスの十字架が必要だったように。吉村美穂は歌う。イエスの釘あとが愛を叫ぶと。

 吉村美穂はクラシックの歌手として、ウィーンをはじめヨーロッパ各地でソロリサイタルを開き、またオペラのソリストとして活躍してきた。音楽性の高さは言うまでもない。

 だが、それだけはない。日本では教会、病院、学校、幼稚園、福祉施設などで、賛美コンサートを開いている。多くの場所で、様々な人に出会い、聴衆を感動させ(私もその一人だ)、また彼女自身も感動体験をしている。

 このファーストアルバム「こころから」も、その出会いの中から生まれた。どの世代の人にも、音楽の愛好家にも、そうでない人にもすすめられる親しみやすい素敵なアルバムだ。

 吉村美穂は歌う。透き通る声で、やさしく、そしてポップで弾むようなメロディーで、楽しくリズミカルに。心にあふれる愛と喜びを。感謝と恵みを。この現実の中で、主は臨在し、今も昔も変わらず共にいてくださり、私たちは光の中を歩むのだと。彼女の歌に合わせ、ステップを踏んでいる私がいる。

 アルバムを聴き終わり、まるで詩篇を読み終わった後のような感じだ。そこには心の叫びがあり、そして主へのこころからの賛美がある。冷たい雪の下で、春の準備が始まっていることを感じる。窓を開け、深呼吸する。ああ、確かに主はここにいる。