CD Review ◆ CD評 「日日草のうた」
久米小百合
音楽伝道者/CCMアーティスト
詩と音の最高のコラボレーション!
岩渕さんの新しいアルバムは、はっきり言ってかなり豪華だ。作曲は岩渕まことさん、詩は星野富弘氏、ボーカルはまことさんのみならず、奥様でもある由美子さんのソロパートも聞ける。そしてアディショナル・ボーカルには、Jゴスペルをリードする塩谷達也君が加わり、クワイヤーには萩原ゆたか、竹下静、神山みさ、といった魅力的なCCM女性アーティストたちが参加している。そしてこの一冊の音と詩のアルバムを、変化に富んだ編曲によってよりドラマチックに仕上げてしまったアレンジャーの西原さん、バラード、ファンキー、はたまた音頭調とすごい仕事ぶりにもう脱帽! さらに岩渕サウンドには欠かせないリズム界の重臣、市原さん、若きベーシストの谷さんの“何でもござれリズムセクション”の安定感もたまらない。こんな素晴らしいメンバーが楽しんで参加しているアルバムです、ってここまでが前置きです。それでこのアルバムの真髄は、とても一言では言えないのでやっぱり気になる人はすぐに買うべきですが、一番ドスンと響いたことは詞じゃなくて「詩」でも歌えるんだ、ということです。ここでは音符の並びや小節数とは無縁な「詩」の世界が広がっていて、その無限に岩渕さんが色を塗っていく。するとメロディーは動的なものだから詩が流れ出すんです。読んでいた言葉が歌い出すってこういうことなんだって。ちょっと古い話で恐縮ですが、昔、久保田時代にラジオの生番組を初めて持たせてもらった時、スポンサーの出版社が一押しでプロモかけていたのが星野富弘さんの詩画集でした。こんなふうに言を紡ぐ人がいるのかと感動しました。同じ頃、岩渕さんや市原さんに出会いました。一九八二年頃だったかな、まだテレ朝が今の六本木ヒルズの場所にあって、私は業界隠れクリスチャンだった。「いっしょに祈ろうよ」と岩渕さん、声をかけてくれたから今があります。だから岩渕さんの歌の上手さは優しさなんです。収められた十四編のストーリー、リスナーの方々にとっても、いつかの自分に出会えるのでは。