CD Review ◆ CD評 「絵が動いた!」名画と名曲で体感する聖書の世界

CD 名曲で描く聖書の世界Vol.3-新約聖書編Ⅱ-
森 祐理
福音歌手

「絵が動いた!」名画と名曲で体感する聖書の世界

 「あっ、この絵……」。ページをめくっていた手が止まり、食い入るようにその絵を眺めました。以前ドイツで出会い、心に残っていた絵と、こんなところで再会できるとは……。全身に傷を受けたイエスの絵を見ながら、出会った時の感動がよみがえりました。
昨年発売された『巨匠が描いた聖書』には、世界的な名画四十六点が収められています。一枚一枚絵を見ながら、時の経つのも忘れて聖書の名画の世界を楽しみました。
でもそれだけで喜びは終わりません。実は、この名画を基にして名曲を集めた何とも素敵なCDが完成したのです。今回拝聴したのは、そのシリーズ第三弾「新約聖書編・」。
画集をもう一度開き、ドキドキしながら曲を聴くと、あの有名な讃美歌「ちしおしたたる」のモチーフが流れ出しました。美しい弦楽器に合わせてオーボエが歌うように奏で始めると、なんということでしょう。「最後の晩餐」の絵が動き出したように感じたのです!名曲と名画がひとつに融合する時、聴き手はその世界に入り込み、体験することができる……私にとって新しい感動が体を包みました。
ディレクターの土井氏が祈りを持って選ばれた数々の名曲は、聖書の絵画の世界を活き活きと描き出し、何倍にも大きく膨らませてくれます。曲も、バッハやハイドン等に代表される古典だけでなく、昭和の時代まで生きたシベリウスやラフマニノフまで幅広く、しかも見事な統一感を感じさせます。個人的には、力強いイメージだったベートーベンの音楽が、「聖ペテロの悔恨」の絵と共に心に沁みるように響いてきたり、新しい印象だったラフマニノフの曲に、古い聖歌が取り入れられていたりと、意外な発見もありました。
時代を超え人々に愛され、受け継がれてきた名画と名曲が、今を生きる私たちに聖書の世界を体感させてくれることは、何という驚きでしょうか。さあこの名曲たちを、ぜひあなた自身で味わってみてください。きっと今まで知らなかった新しい聖書の世界が広がり、更なる神の愛を知ることができるでしょう。