CD Review ◆ CD評 『めくるめく季節の中で』-クリスマスからクリスマス-
西 由起子
ソプラノ歌手
豊かな賛美で紡ぎ出される日本の四季
オペラでも活躍中の稲垣俊也さん・遠藤久美子さんが、日本の四季になぞらえて讃美歌・独唱聖歌からオペラアリア・唱歌までを独唱・重唱を織り交ぜて歌う「めくるめく季節の中で」。お二人のダイナミックな歌声が神様の雄大な世界を歌い上げている。「クリスマスからクリスマス」という副題の通り、降誕・クリスマスの讃美歌に始まり、季節を追って四旬節(受難節)~イースター~永生~祈り~感謝と続き、クリスマスに戻る。オペラ「細川ガラシア」「アドリアーナルクヴルール」は現在も頻繁に上演されるオペラであり、ソプラノのアリアも演奏会で単独に演奏されるほど有名である。『秋~永生・感謝』の項には懐かしい曲が並ぶ。「長崎の鐘」はなんとイタリア語でも歌われ、するとこのラジオ歌謡がイタリアのカンツォーネのように聞こえてくるから不思議! 「故郷」は私も大好きな岩河智子氏の優れた編作。日本の豊かな自然とそれを作られた神様への感謝が湧き上がるような演奏である。「いかなる恵みぞ」は「アメイジング・グレイス」。ノンクリスチャンの方へのプレゼントにも良い。豊かな声のお二人だが、声に任せずその細やかな音楽性と深い信仰が絡み合い「みあしの跡を」「主の祈り」など思わず胸に迫るものがある。共演も多彩で、曲ごとにオーケストラ、ピアノ、パイプオルガンが歌を支える。
稲垣さんは実は芸大の同級生。当時の印象は「上品で物静かな貴公子のような方」だった。去年、卒業以来初めて舞台でご一緒させていただきひさしぶりにお会いした稲垣さんは、美しい奥様(遠藤さん)と共に、相変わらずの美男子ぶりと益々磨かれた美声でお客様を魅了されていた。またそのトークが絶品! 時にはお客様を笑いの渦に巻き込み「この方、こんなにおもしろい方だったの?」と目から鱗の思い。何より曲を説明しながら聖書の世界を分かりやすくお客様に語られ、エンターテイナーとしても伝道師としてもすばらしく輝いていた。今度はお話入りのCDも期待したい!