CD Review ◆ CD評 『クリスタル・マイヤーズ』
小林義宣
HISWILL 代表
17歳、絶対キリスト主義
クリスタル・マイヤーズ、聞いたことがある名前だなと私は記憶をたどった。彼女のストレートな歌声が聞こえてきた瞬間、記憶の片隅からハッとある映像が浮かび上がった。二年前のナッシュビルで彼女の演奏に出くわしていたのだ。当時まだ十五歳の彼女の歌は、バンドのギターの爆音を跳ね飛ばす勢いで、鮮烈なるメッセージを聴衆にたたきつけていた。二年の月日がたち、彼女の想いが詰まったこのアルバムによって、再会を果たしたわけだが、「自然に湧き上がってくる」という彼女の歌詞の中にこめられたメッセージは、聖書の中から彼女が見出した、キリスト者として生きてゆく大切な哲学がにじみでている。それは「アンチ・コンフォーミティ(絶対自分主義)」協調性を重んじる日本文化からは敬遠に値する、自己中心的な考え方に聞こえる言葉だが、キリストにあってこの言葉がどのような意味で、いかに大切な事なのかを、彼女はこのアルバムの節々にちりばめている。
キリストのこんな言葉がある「この世と歩調を合わせてはいけません。」今の社会の中にどれだけ個性に対するプレッシャーがあり、私たちを怯えさせ、疲れさせていることだろう。みんなから好かれること、認められることが優先され、人目を気にして自分が自分であることを放棄することに慣れてしまう。しかし、本当の自分は心の中に存在していて、対外的な自分との間にジレンマが起こる。この世に対して本当の自分を否定してしまうのだ。このことは、昨今の逸脱した少年犯罪や、自殺、ドラッグ問題などに起因しているのではないだろうか?
十七歳の彼女は知っている。まわりのだれかではなくキリストを選ぶこと。人目を気にせず、神に愛されている自分を貫くこと。三十歳を過ぎた私は少し恥ずかしくなってこの原稿を書いている。私が十七歳の時このようなメッセンジャーに出会えていたら、多感な若かりし私はどれだけ励まされたことであろう。キリストにあるパンク魂をもって今日からおじさんも再スタートだ。