CD Review ◆ CD評 『Bread from Heaven』

「Bread from Heaven」
国分友里惠
歌手

心を届ける力

 シンガー、マルチプレイヤー”kiki”こと桜田菊代率いるクワイヤー「CHOUB」(シューブ)のデビューアルバムだ。

 ディレクターの桜田は、BOA、鬼束ちひろ、中島美嘉らのヴォイストレーナーでもあり、その評価は高い。二〇〇一年三月に訪れたマニラで、ストリートチルドレンのケアをしている牧師(彼自身が子ども時代をストリートで育っている)と衝撃的な出会いをする。「私の中の中途半端なボランティア精神は一気に打ち砕かれました」。そう彼女は語っている。以来、その牧師を通して路上で生活する子どもたちの支援を続け、活動を展開してきた。

 一曲目は、子どもたちの叫ぶ声から桜田の祈りに始まる。「In Your Hands」すべての子どもたちが安心して眠れるように……力強い歌声に包まれハッとした。

 子どもがのびのびと安全に成長できる環境、こんな当たり前のことが、実はこの地上のほんの一握りの人々にしか許されていないのだ。このいびつな社会の中にあって、大切なメッセージを忘れてはならない。子どもたちの不幸は私たちの心を不幸にし、子どもたちの幸せは、そのまま人々の幸せなのだ。

 三曲はあっという間だが、聴き応えがある。愛と力に満ちた音楽はいつもノドごしがいい。思わず繰り返し聴いていた。神を喜びすがる心を呼び覚まし、いつの間にかキリストの翼の下に安心して、天を滑空するような優しい気持ちになった。

 いいクワイヤーだ。バッキングもアレンジも心地よい。参加ミュージシャンは、全て第一線で活躍中の一流プレイヤーだ。桜田特有のリーダーシップは、制作中にも奇跡を巻き起こしたに違いない。素晴らしい仕上がりになっている。「Bread from Heaven」は聴く者を天からのパンで満たしてくれること間違いない。売り上げの一部はストリートチルドレンの支援金にあてられる。多く売れれば、その分、より多くの「パン」を送る事ができるのだ。シューブを聴いて満たされた心がマニラの子どもたちに届くといい。