CD Review ◆ CD評 『Come To Me カム・トゥ・ミー』
中山 信児
日本福音キリスト教会連合 菅生キリスト教会 牧師
よい働きを始められた方は、それを完成してくださいます
「地中海ソプラノ」として紹介されているスペイン歌曲のスペシャリスト工藤篤子さんが、Duo TAKASEとLaLoの二つのユニットをバックに吹き込んだのがこのアルバムです。ところで「地中海ソプラノ」って何でしょう。ある方の説明によれば、「黄金のトランペット」などと例えられるイタリアオペラなどの金管的な響きの歌声に対して、木管楽器を思わせる深く柔らかな歌声のことなのだそうです(同じ地中海でもイタリアは例外なのでしょう)。そう言われてみると、彼女の歌声は、よく耳にするイタリア系の声でも、ドイツ系の声でもなく、まろやかで包み込むような柔らかさを持っています。
そんな彼女の歌声が最もよく生きているのは、スペイン語で歌われるAquél Quien La Buena Obra Empezó(よい働きを始められた方は)です。ピチカートを効かした宝石箱のような伴奏をバックに歌われるミディアムテンポの小品は、このアルバムでの一番の収穫でした。やはり「地中海ソプラノ」にはスペイン語が一番しっくり合うようです。
もう一つの収穫は「十字架ブール・バール」(Boulevard De La Croix)です。ここではシャンソン風に徹したLaLoの好サポートが光ります。本当にアコーディオンを弾いているのでしょうか、それともキーボードでそれらしく演奏しているのでしょうか、気になってしまいました。洒落た装いに身を包んだ若いクリスチャンが、カルチェラタンで、シャンゼリゼで、愛や思想を語り合う友人たちに向かって顔を輝かせながらイエスさまのことを証ししている姿が目に浮かびました。
英語の歌ではタイトル曲のCome To Me(わたしのところへ来なさい)がよく歌声に馴染み、心に響きました。このアルバムは、一曲目がDuo TAKASEによるインストゥルメンタルのCome To Me そして終盤にLaLoの伴奏によってもう一度同じ曲が歌われるという洒落た構成になっています。
これからも、工藤さんが、お得意の地中海風センスにあふれた素敵な名曲賛美をたくさん紹介してくださることを期待したいと思います。