CD Review ◆ CD評 『CONVERSATIONS』
峯島 平康
シオンの群昭島森の上キリスト教会 会員
音楽がスタートした瞬間から、圧倒的な才能を感じる!
僕はシンガー・ソングライターのパーソナルでシンプルな音楽が好きです。好きなシンガー・ソングライターに共通する要素をあえて一言で表現するなら、「リアリティーの存在」というところでしょうか。特に70年代初頭、アメリカから静かなブームとして発信された彼らの音楽は、いまだ色褪せない愛着と魅力を感じさせてくれるものの一つです。混沌とした華やかなロック・カルチャーの時代に、派手とは言い難いたたずまいで、内省的で等身大の自作曲を歌いました。それはあまりにも正直で、狂熱と幻想から覚め、疲弊した多くの若者に共感と癒しを与えたのです。それは自分の弱さを隠さずに歌で表現するということでした。自分はリアルタイムでこれらの音楽を聴いてきた世代ではありませんが、時代や国境を越え、常にリアリティーある正直な表現は、静かに輝きを放ち、人の心をとらえるのです。
70年代から現在に至る系譜の中でも、女性CCMシンガー・ソングライターSara Grovesのデビュー作「CONVERSATIONS」 はまれに見る傑作です。ただの地味な新人のデビューアルバムなどと言って、簡単に見過ごすことのできない圧倒的な才能を、CDプレーヤーをスタートした瞬間から感じることでしょう。美しいメロディー、知的で文学的なリリック、信仰的洞察の深さ。木綿の素材のように飾らない温もりあるヴォーカルと抑制の効いたアコースティック主体のバンドサウンドが一体となり、全曲がおどろくほどの表現力をもって迫ってきます。
また彼女は生きた詩を書きます。ごくパーソナルな身近な視点で、クリスチャンライフの感情体験が表現された歌(ただ模範的なだけで、個人からほど遠いといったものではなく、むき出しで誠実に神と人とに向き合ったもの)を正直に歌い上げます。この珠玉の作品を耳にする時、多くの人が何らかの共感と示唆を得るでしょう。そして深く味わうためにも、歌詞・対訳・解説付きであるのはうれしい限りです。
このように素晴らし過ぎるクリスチャンミュージックをもっと多くの人に自慢しましょう。