CD Review ◆ CD評 『God Bless You』

『God  Bless You』
西村 あきこ
ゴスペル・シンガー&クワイア・ディレクター

哀しみも苦しみも全て包み込む これぞ日本のゴスペルサウンド

May God bless you.
もしきみが 
見えないものに目を留めるなら 
感じるその心に 
きみが通ってきた全ての悲しみも 
May God bless you.

 KiKi(キキ)さんとは、「ストップ・ザ・ドラッグ」 というイベントで一度共演させていただいたことがありました。彼女がトークの中で、ドラッグによってお兄さんをはじめ、家族も共に苦しんでおられる様子を赤裸々に、涙ながらに語って下さったのを覚えています。

 ドラッグというものをただ知らないだけで、実はすぐ側にあるのだ、と思い知らされ真剣にこの問題に取り組んでいらっしゃるKiKiさんをすばらしいと思いました。そんな大変な状況にいらっしゃるのに、楽屋での彼女は気さくで本当に明るくて、周りの人をみんな元気にしてしまうような方でした。そんなKiKiさんから生まれるアルバムは、たくさんの人を元気にしてくれるアルバムに仕上がっています。

 ゴスペル界の大物、モントレル・ダレットさんのプロデュースで、彼のラップも入っていて、とてもゴージャスな、かっこいいサウンドに仕上がっており、聴くものの耳を飽きさせない、それでいて歌詞が温かくてスムーズに心に入っていくような曲調が印象的です。そんな中で耳に残った歌詞が冒頭の部分です。

 さまざまな険しい、悲しい道を歩んで来たであろうKiKiさんが、イエス様に出会ったから「全ての悲しみは、きっと祝福されるから」と言うことができるのだな、とじーんときてしまいました。目の前の悲しみに目を留めるのではなく、見えないものに目を留めるならきっと(神を)感じる事ができる、とは素晴らしい歌詞です。

 きっとKiKiさんの経験を歌っているのだろうと思える「さまよいながら」など、私たち日本人にもわかりやすく聴けて、しかもサウンドは本場もの、というゴスペルアルバムだと思います。