CD Review ◆ CD評 大切な人に贈りたい
クラシックの音色にのせた祈り

『 CD 安かれわが心よ 』
青木記代美
音楽・美術による文化交流ミニストリー主宰
コンサート・プロデューサー

クリスチャン・アーティストであるばかりか、日本のクラシック・フルート奏者の第一人者でもある紫園香さんの八枚目のCDです。曲目といい、共演者といい、クリスチャンとクラシック界の架け橋となることを長年祈ってきた紫園さんの集大成ともいえる内容になっています。伴奏は、世界第一線で活躍する藤井一興氏。紫園さんと藤井さんは、三十年近く共演を重ねてこられた間柄で、熟成した賛美がほとばしり溢れます。
「安かれわが心よ」に始まり、終曲「キリストにはかえられません」に至る演奏と流れは秀逸で、聴く者は、“賛美の散歩道”に安らぎ、さまざまな絶景に瞠目し、光を浴びつつ、恵みの高嶺・御国へといざなわれます。
主イエスとともにいれば耐えられない悩み・苦しみはないとの祈りの賛美である「安かれわが心よ」からは、震災後の私たちに格別の平安が響いてきます。続いて日本人のたましいの歌「荒城の月」「赤とんぼ」のアレンジ曲、そしてカッチーニ「アヴェ・マリア」など有名曲から、徐々に華やかな技巧も聴き所の名曲へと峰を上っていきます。
曲の難易度やジャンルが多岐にわたるのに、不思議な一体感があるのは、すべてに賛美の心が貫かれているから。それは今回、土井康司氏に題名と聖書箇所が指定され、委嘱された「風わたる樫の木」に凝縮されています。
「主はわたしに油をそそぎ、……心の傷ついた者をいやすために、わたしを遣わされた。……すべての悲しむ者を慰め、シオンの悲しむ者たちに、灰の代わりに頭の飾りを、悲しみの代わりに喜びの油を、憂いの心の代わりに賛美の外套を着けさせるためである。彼らは、義の樫の木、栄光を現す主の植木と呼ばれよう」(イザヤ書61・1~3)
“義の樫の木、栄光を現す主の植木”を祈り、太い樫が大地深くに根を張り青々と茂った葉陰から、〝希望の光〟が音に余韻にキラキラと輝くのが見えてくる賛美です。そしてその樫の木をわたる風が、日本全国に、世界の果て果てにまで届きますようにという祈りが聴こえてきます。

<収録曲> 1.シベリウス/安かれわが心よ『讃美歌21』532番(編曲・飯野糸穂子) 2.滝廉太郎/荒城の月によるファンタジア? 3.山田耕筰/赤とんぼによるポエム(編曲・安田芙充央) 4.フォーレ/祈りながら 5.カッチーニ/アヴェ・マリア 6.ライネッケ/バラード 7.フォスター/スワニー河 8.ロイド=ウェバー/ピエ・イエス 9.ヴィヴァルディ/ごしきひわ(第1楽章アレグロ、第2楽章カンタービレ、第3楽章アレグロ) 10.土井康司/風わたる樫の木(第1楽章、第2楽章) 11.シークレット・ガーデン/You raise me up 12.ヴィドール/組曲(モデラート、スケルツォ、ロマンス、フィナール) 13. シェー/キリストにはかえられません『教会福音讃美歌』465番(編曲・柳瀬佐和子)