CD Review ◆ CD評 私たちと同じ生身の人々が
苦悩しながらも変えられて……
岩井基雄
日本福音自由教会協議会 清瀬福音自由教会牧師
この映画は、イエス・キリストの受難のとき、最後まで主のもとを離れなかった二人の女性……イエスの母マリアと、マグダラのマリアに焦点が当てられています。
イエスを気遣う母マリアの心情や、マグダラのマリアの背景、特にマグダラのマリアの生い立ちや主との出会いの経緯に至っては、大胆な脚色がされています。しかし、弱さも持つ彼女の苦悩や救われた喜びには心を打たれます。また、ヘロデ王の妻ヘロデヤも、より悪女的なキャラクターにデフォルメされているようです。
しかし、このような脚色があるからこそ、この作品に登場するイエスの周囲の人々は皆、イキイキと人間らしく描かれ、観る私たちの現実の悩みや葛藤の中に、「イエス・キリストのいのち」が染み込んでくるのです。さらにイエスの十字架と復活への歩みが聖書に忠実に描かれており、それを取り巻く人々の信仰と内面の葛藤も丁寧に表現され、今の私たちの心に、信仰に、問いかけてきます。
イエスの母マリアの純粋な信仰の姿にも感動しますが、この作品ではさらに彼女が、宣教を開始した息子イエスに対し、母親ならばだれしも当然抱く「わが子を守りたい」という想いに苦悩する場面も描かれています。信仰と母性との間で葛藤しながらも、最終的にはすべてを神に委ね、イエスを「わが主」と呼ぶ姿には心を打たれます。
聖書の中の人物が、単なる名前だけの存在ではなく、私たちと同じように移ろいやすい感情を持つ生身の人間であり、そんな彼らがイエス・キリストとの関わりの中でどのように変えられていったのか……。フィクション交じりの作品ですが、物語の進行とともに、力強く憐れみ深い神様だけが、悩みや罪にとらわれやすい私たち人間を救ってくださる唯一のお方であり、そのために神のひとり子であるイエス・キリストが十字架の苦しみ、そして復活の勝利へと向かってくださったことを改めて深く味わえます。
聖画の再現のような美しい映像の中、イエスを取り巻く人々の人間的な葛藤が豊かに息づいており、キリストにある救いの素晴らしさといのちが輝いている作品です。
「イエスと二人のマリア
―選ばれし愛の生涯―」
個人鑑賞用 特価4,680円(49020)
教会・レンタル用 特価9,280円(49021)
発売・販売元 エプコット
製作・発売元 ライフ・クリエイション
TEL.03-5341-6927
■監督:ジャコモ・カンピオッティ「ドクトル・ジバゴ」 脚本:フランチェスコ・アルランチ 吹替翻訳:鹽野佐和子
字幕翻訳:町野健二 (2012年 ドイツ・イタリア) 音声:英語、日本語 字幕:日本語字幕、日本語吹替用字幕 204分