岩渕まこと
ゴスペルシンガー ゴスペル音楽院講師
心からお祝いしたい
届いたCDを早速プレーヤーにセットした。そこに聴こえてきた歌は力が抜けていて、MIGIWAの世界が自然に表現されていた。彼女が大人の歌を歌っているからなのか、逆に歌の中に素直な少女の姿が見えてくるような、不思議な感覚を覚えた。アルバム全体の作りもていねいで、トータルにとても好感が持てる仕上がりになっている。さて今回のアルバムはタイトル曲の「親愛なる神様へ」から始まる。この曲はMIGIWAから神様への短い手紙のようだ。「あなたのために生きて行く」という歌詞が、心の深いところから発せられていることがわかる。まるで「自分を飾らなくて良い」という決意でもしたかのように、心地よく歌い手の言葉が聴こえてくる。このことはアルバム全体に流れていて、良い空気と時間を部屋に満たしてくれる。歌詞カードを見ると、それぞれの詞の後に、聖書のみことばが記されている。これは一つ一つの作品が神を讃える歌として生み出されたことを物語っている。「主は私の羊飼い」「十字架の上で」「この身に受けた痛みも」という曲はワーシップソングとして歌われても違和感がないだろう。日本生まれの賛美歌にこだわっている私としては、こんな形で新しい賛美歌が生まれることを、心からお祝いしたい。ほっとしながら聴ける歌の一つ一つ。やわらかな午後の日差しの中で、おいしい紅茶でも入れてこのアルバムを楽しみたい。ふと「一切れのかわいたパンがあって、平和であるのは、ごちそうと争いに満ちた家にまさる」という聖書のことばが頭に浮かんだ。勝ち組、負け組みなどということばが大手をふる時代に、大切なメッセージが歌われている。今、エンディングの曲「The Salvation Poem~救いのうた~」が流れ始めた。「新しい姿で あなたのため生きてゆく」。そこにはしっかりと立っているMIGIWAの姿が見えてきた。アルバムを聴きながら、これからのCCMに道を示すアーティストが生まれてきたなと感じた。