CD Review ◆ CD評 CD「Bless You」
河野勇一
日本バプテスト教会連合・緑バプテスト教会牧師、同連合・理事長
豊かな瞑想の旅にいざなう音楽
小堀英郎さんの「Your First Love ─初めの愛に─」は私のお気に入りCDのひとつである。昨年、私の牧会している教会のチャペルコンサートにお迎えして以来、家で、車で愛聴してきた。落ち着く! 安らぐ! 満たされる! この秋、セカンドアルバム「Bless You」がリリースされ、さっそく聴いてみた。ああー、あのフレンチな香りがして美しく、しかも日本人の心にスーッと沁みこんでくる、どこかなつかしいような“コボリ・サウンド”だ。今度も、すべて彼のオリジナル曲である(最後の曲だけはアメイジンググレイスとつなげているが)。しかし、一枚目とは違った瞑想の旅へといざなってくれる。「オータムワルツ」では、乾いた空気に落ちてくる落ち葉を思い描いた。ジャケットを見れば、パリの街角を歩いている情景のようだ。
そして「パラダイス」を聴きながら、私は「ぶどう園のたとえ話」(マタイ二〇章)に思いを馳せた。朝からぶどう園で働いた男を尻目に、夕方五時から一時間しか働かなかった男にも同じ一デナリを渡して「私としては、この最後の人にも、あなたと同じだけ上げたいのです」と主人に語らせ、人々を驚かせているイエス様の“恵みのユーモア”を感じて、ひとり笑みをこぼした。
小堀さんは、音大四年の秋に交通事故で左手首の複雑骨折という重症を負う。「完治は不可能。日常の運動にも支障が出るだろう」と診断されるが、そこから奇蹟的にいやされた経験を持つ。以来、彼は「この手はもはや自分のものではない」と神を賛美するために生涯を捧げた。不思議にも、その左手は以前よりもよく弾けるようになったという。
だから、彼の曲と演奏は歌詞がなくとも神への賛美歌である。聞く者はそれを感じる。韓国にはクリスチャン以外にも彼のファンが多くおり、そこに神の愛と恵みを聴きとる人がいるというのもすばらしい。名古屋での東海宣教会議にゲストでお招きしている。五百人の聴衆を魅了するに違いない。