CD Review ◆ CD評 CD『My Peace』
「ヨハネの福音書」with「朝ごとに新しく」
佐藤岩雄
カンバーランド長老教会 さがみ野教会牧師
すてきなインストゥルメンタルと福音書のコラボレーション
「そうだ、こんな時にマイピースを聞いてみよう。」牧師たちの修養会で、この冬に雪深い郷で見た暁光は、闇の世界に一筋の紅い帯として上がり始めた。CDをかけると、静謐の世界にクラリネットとホルンの響きをバックにして、ヨハネ福音書の穏やかな朗読が響き始めた。景色を眺めるためのBGMだったつもりが、いつの間にかに、「光は闇の中に輝いていた……」というヨハネ福音書の壮大な世界観にひたり、CDから流れる聖書の朗読の世界に引き込まれていくのを感じた。……などと書いている私も、雪山を降りれば、小さな町で働く牧師である。優雅な情景に見とれる場などないほどに、雑事をこなしながら毎日を過ごしている。しかし、そんな日常の中で流すマイピースは、気持ちのゆとりと穏やかさを取り戻してくれた。
教会の何人かの仲間と、マイピースをしばらく聞いてみた。ホルンの優しい音色と朗読者の深く響く声は、長い間聞いていても疲れることがなかった。それぞれ「そうだ、こんな時に……」とおしゃべりが始まった。主婦の方は、ゆったりとした曲調だから台所仕事をしながら流すのにいいわねと笑顔で話された。若い会社員は、データ形式を変えて持ち歩けば、いつでも聞けると言われた。朝早く出勤される方には、電車で一日に祈り備えながら聞くことが出来るだろう。ある方は、聖書を読み祈るような気持ちになかなかなれないような時に、静かに流すのに良いですねと感想を述べていた。確かに耳で聞く福音は、聖書を目で読む時とは違った感覚を呼びおこして、自然に祈りへと導いてくれるのかもしれない。一人ひとりの「こんな時、マイピースを聞こう」を繰り返しているうちに「言葉は肉体となった。」の言葉のごとく、福音書のメッセージが私たちの一部となり、それぞれの生活のふとした場面で生きる言葉として響いてくる事だろう。ぜひ、これがシリーズ化されて、他の書簡のCDも発売されることを願っている。
(四月二十日には「聴く聖書 ── 新約聖書」を発売予定です。)