DVD 試写室◆ DVD評 「このラストはずるい」と思いながら、涙が止まらなかった
砂原 俊幸
いのちのことば社 フォレストブックス編集長
フィンランドの自然豊かな村を舞台に、主要な登場人物は二人。とてもシンプルな映画だ。
殺人の罪で終身刑に服していた女性レイラは、恩赦で出所し、この村に住む年老いたヤコブ牧師の“世話”をするためにやってくる。その世話とは、目の見えない牧師に送られてくる多くの祈りの要請の手紙を代読すること。だから映画のタイトルは「ヤコブへの手紙」になっている。
要請される祈りは「いなくなった犬が見つかりますように」という子どもの依頼から、DVの苦悩までさまざまだ。心を閉ざし、何に対しても投げやりなレイラは、牧師と距離を置き、面倒くさそうに手紙を読むという日常が続く。しかし、ある日、ぱったりと手紙が来なくなり、のどかに見えた生活の奥にある真実が明らかにされていく……。
レイラの固く閉ざされた心が、本当に無力な牧師の愛によってゆっくりと変化していくのだが、その背後にある神の愛が、画面からジンワリと伝わる。そして後半では、良い働きをしていた牧師自身にも、自らの中に潜んでいた闇が示され、さらに深く御腕に抱かれることになる。
ストーリーは、前半ののどかな時間の流れと対照的に、ラストで急展開する。その結末に「ちょっとずるいよな」という思いがよぎりながらも、心のほうはそんな声をあっさりと置き去りにし、涙が止まらなくなっていた。神と人の共同作業であるなら、お金をかけなくても本当に良いものが生まれる。それは、この映画が好例だし、私たちの仕事や人間関係にも言えることなのかもしれない。クリスチャンが感動できる聖書的な深さを備えながら、聖書をまったく知らない人も良くできた作品として楽しめるのはまさに脚本の妙であり、伝道文書を制作する私にとって目指すべき極みである。
個人伝道だけでなく、伝道集会にもお勧めできる作品だ。見終わった後に、要所で効果的に出てくる聖句が自分自身のこととして、改めて思い返された。
「ヤコブへの手紙」
個人鑑賞用 5,040円
(49995)
教会・団体レンタル用 12,600円
(49996)
発売・販売元 エプコット
取扱い ライフ・クリエイション
TEL.03-5341-6927
*本編75分/フィンランド語、日本語字幕 <初回限定ポストカード付き!>
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