DVD 試写室◆ DVD評 編集しないからこそ、わかること・・・
DVD「ヨハネの福音書」
大橋由享
友愛グループ イエス・キリスト ファミリー教会牧師
編集しないからこそ、わかること・・・
前回に引き続き、DVD『ヨハネの福音書』をご紹介したい。この作品の特徴は、なんといっても、ヨハネの福音書を忠実に再現していることだろう。台詞もナレーションも、すべて聖書そのまま(Good News Bibleによる)。ドラマチックにするための脚色や、ひねりを利かせた解釈も一切なし。
そのことを最も感じさせるのが、最後の晩餐のシーンである。
ご存知のように、四福音書の中で、ヨハネの福音書だけが、最後の晩餐におけるイエスの告別説教を記録している。しかも、驚くほどの長さだ。
この告別説教は、監督泣かせの場面だと思う。なにしろ、場面転換も、登場人物の動きもない中で、延々とイエスの説教が続くのだから。
普通なら、編集を入れて短くするところだろう。しかし、この作品においては、告別説教を削ることなく、聖書どおりに忠実に再現している。ジェットコースター・ムービーに慣れている現代人にとっては、はなはだ冗長に感じるシーンだ。思わず、リモコンの早送りボタンを押したくなるだろう。
けれども、クリスチャンの皆さんには、じっくりと観ていただきたいと思う。私は、このシーンで、さまざまなことを再認識することができた。
最後の晩餐の席上、もうすぐこの地上を去るイエスは、弟子たちに、万感の思いで語るのだ。その口調、その表情から、いかに主が弟子たちを愛しておられたかが胸に迫ってくる。イエスは、ご自分が去った後の弟子たちのことを思いやり、案じればこそ、念を押すように、彼らの心に刻み込むように語ったのである。
ところが、弟子たちは一向に悟らないのだ。イエスがもうすぐいなくなるという予告に、打ちのめされ、悲しみ、途方に暮れるばかり・・・。薄暗い室内で、揺らめく明かりに照らし出された弟子たちの顔は、実にオロオロとして頼りなげである。
そんな弟子たちの様子を観ていると、改めて合点がいく。「ああ、こんな弟子たちだったからこそ、助け主である聖霊が必要だったのだ!」。それは、もちろん私自身にもあてはまることだ。
最後の晩餐のシーンだけに限らない。皆さんも、この作品全体を通してインスピレーションを受け、新たな発見をすることができるに違いない。お薦めの一枚である。