DVD 試写室◆ DVD評 128 「フランシスコ・ザビエル」
大橋由享
友愛グループ イエス・キリスト ファミリー教会牧師
人生は出会いで決まる! ―― ザビエルとロヨラ
今号から、2回にわたってDVD「フランシスコ・ザビエル」をご紹介する。本作品は、ザビエル自身の手紙や研究者たちの解説、役者による短い再現シーン、ゆかりの地の映像などを用いて、ザビエルの人生を、丹念に、そしてテンポよくたどっていく。
ザビエルというと、両手を胸の前で交差し、斜め上方を見上げる、あの肖像画を思い浮かべる。いかにも聖人といった風情だ。しかし、若き日のザビエルは、そのイメージとはほど遠い。聖職者を目指し、19歳でパリの大学に入学したが、夜毎の放蕩三昧。酒と女に金を使い果たすたびに、親族に手紙を送って無心した。本作品の中で、その一節が読み上げられているが、かなり情けない文面だ。こんな形で公表されていることを知ったら、天国のザビエルも、さぞや顔を赤らめることだろう。
「人生は出会いで決まる」と言われるが、そんな彼の人生を変えたのは、イグナチオ・デ・ロヨラとの出会いである。イグナチオも、ザビエル同様、地方貴族の出身。しかし、富も名誉も捨てて、神の道を選んだ。そして、疫病患者に奉仕し、人々に教えを説いていたのだが、学問的な裏付けを得るため、38歳にしてザビエルと同じ大学に入学したのである。学生たちは、はるかに年上のこの後輩との出会いで変えられ、感化された。そして、彼を慕うグループは、彼と共に貧しい人たちに福音を伝え、慈善病院で働き始めたのだ。
ところが、肝心のザビエルは、彼らから距離をとり、相も変わらず夜遊び三昧。懲りないやつである。しかし、とうとうにっちもさっちも行かなくなり、イグナチオのもとに、金を工面してもらいに行くことになった。研究者は、「たぶんこの時、イグナチオはザビエルに、神学的な話というよりは、神が自分にしてくださったことを証ししたのだろうと思います」と推測する。
いつの時代も、個人的な証しには力がある。以来、ザビエルはイグナチオに心を開き、彼の活動に加わるようになったのだ。神と出会ったイグナチオ。そして、イグナチオと出会った学生たち。こうして始まった宣教活動が、あのイエズス会の前身となったのである。神は、出会いを用いたもう。
宣教師としてのザビエルの歩みは、次号でご紹介したい。お楽しみに。