flower note 1 清く愛らしい花


おちあい まちこ

~今月の植物~
スノードロップ
スノードロップは、ヒガンバナ科ガランサス属の総称。ガランサスとも。球根で育つ。種子から育てることもできるが、花が咲く大きさの球根に育つまで数年かかる。

新年度から植物の写真を掲載することになりました。今月はスノードロップです。朝の陽の光を受けてきらきらと輝く小さな雪の塊は、あっという間に水滴に変わってしまいます。なみだ型のつぼみにちょうど光が当たってランプのように見えました。
スノードロップというと、園芸家の故柳宗民先生を思い出します。NHKの「趣味の園芸」に長く出演しておられました。園芸家である私のいとこが先生と親しく、一緒に先生の種花園をお訪ねしたことがありました。お土産にとスノードロップの苗を下さいました。実はそのとき、先生とお会いするのは2度目でしたが、先生が私の顔を覚えているとおっしゃって、大変驚きました。私がまだフラワースクールで学んでいた頃、先生が講師として招かれ、私は一番前の席で2時間ほどの植物学の講義を受けました。先生の話に引き込まれ2時間があっという間で、もっと聞きたい、知りたいとそのとき強く思いました。
講義で学んだのは、植物にはそれぞれに歴史があるということです。どこで生まれ育ち、どのように世界に広がっていったのか、それぞれの国でどのように育てられ、人々に愛され生活の中に入っていったのか。名前の由来など、調べてみると興味深く、それぞれの国の歴史とも関連していることがわかります。先生は植物の色素の話の中で、青いバラの作出の難しさについても語られ、品種改良は時間も労力もお金も莫大にかかることをそのとき知りました。先日神代植物公園のバラ園に出かけたおり、うす紫なのにブルームーンとかブルーバユーと名付けられたバラを見て、ふとそのときのことを思い出しました。
花を見るたび、美しさのみならず、今日に至るまでのその背景が気になるのは、先生のあのときの教えが生きているからに違いありません。スノードロップを見ると「品種改良は夢とロマンだ」と熱く語っておられた先生の姿が思い出され、感謝の気持ちが湧いてきます。うつむいた清く愛らしい花に「ありがとう」と声をかけたくなるのです。