flower note 12 美しい葉の色


おちあい まちこ

~今月の植物~
ナンキンハゼ
ナンキンハゼ(Tri-adica sebifera)は、トウダイグサ科ナンキンハゼ属の落葉高木である。以前はシラキ属に分類され、Sapium sebiferum の学名で呼ばれていた。種小名の sebifera は「脂肪のある」の意。

色とりどりのナンキンハゼの葉がハラハラと舞い落ちると、やがてアドベントがやってきます。「この1年の何と早かったこと!」とあれやこれやを思い返すのです。
ハートの形のこの葉は、赤、黄色だけではなく、緑、オレンジ、茶褐色、ワイン色などさまざまな色があります。前号では、樹木が冬の寒さをしのぐため、葉を落とす前に栄養素を分解し幹へと送り込む、見事な仕組みを取り上げましたが、今回は美しい葉の色について触れたいと思います。
秋に日照時間が短くなり、寒さが増してくると(8℃以下)、落葉樹は葉を落とす準備を始めます。5?6℃以下で紅葉が進みます。イチョウやブナ、カツラなどの場合は、葉の緑色のタンパク質クロロフィルが分解して、それまで隠れていた黄色い色素「カロチノイド」が現れます。カエデなどの赤はというと、光合成によって作られた糖は枝には流れず、葉に蓄積され、太陽光の影響で赤色の色素「アントシアニン」が形成されます。では色とりどりのナンキンハゼはどうでしょう。クロロフィル、カロチノイド、アントシアニンの色素がいろいろな割合で混ざり合っているため、1枚の葉でも部分によって色が異なります。サクラや柿の葉も同様、とてもきれいです。葉の色が変化した後、離層というコルク細胞が葉柄の付け根にでき、やがて葉が落ちます。
葉っぱには葉っぱの命があり、雨や嵐にも負けず、落葉のときまで与えられた場で一生を過ごすのだなあと、ナンキンハゼのハートのひとひらを手にするとそんな気持ちになります。「クリスマスがやって来ますよ!」と知らせてくれる樹でもあります。
1年間担当させていただいた表紙写真とエッセイは今号で最終回です。撮るよりも書くほうが大変でした。しかし、植物を通して私たちが他のすべての生き物と、月や太陽や水や…さまざまなものを共有して生きていること、互いに生かされていることを改めて感じつつことばにしていくことができた、豊かな時間でした。ありがとうございました。