NEWS VIEWS FACES 「おふくろさん」騒動と著作権とゴスペル界


礒川道夫
ライフ・エンターテイメント チーフプロデューサー

森進一さんが「おふくろさん」の著作権のことで問題を起こし、作詞者の川内康範さんが、「森さんに歌わせない」と言い出した騒動をご存知でしょう。この騒動は、キリスト教界やゴスペル界には関係ないことのように思っておられる方が多いかと思いますが、実は日本で活動する以上、この「著作権」の問題は、私どもが注意を払っていないと同じような問題に巻き込まれる恐れが十分にあります。

 この騒動は、森進一さんが「おふくろさん」の歌詞を変えてしまって歌っているような印象を持ちます。しかし、実際は歌詞自体をいじったのではなく、原曲の前に語り風の節回しのフレーズを付けて歌っていたもので、そのフレーズも故・保富康午さんが詞を書き、原曲の作曲者である故・猪俣公章さんが曲をつけたものです。彼は多分事務所の指示で歌っていただけでしょう。しかしこれが、「著作権法」の「著作者人格権」を犯し、「同一性保持権」も犯しているとして川内康範さんは、この曲を歌わせないとし、日本音楽著作権協会は警告を出したのです。

 さて教会もこれと似たようなことをしていないでしょうか。海外で歌われているワーシップソングを誰の許可も取らずに訳詞をしたり、一般で歌われている曲を替え歌にしたりなどなど、ちょっと考えなければいけないことがたくさんあります。ゴスペルのためにはCD、CD-ROM、DVDをコピーして使用しても何とも良心の呵責を感じない雰囲気さえあります。

 では次のケースはどうなのでしょうか。ご一緒に考えてみて下さい。

 ケース

  1. 海外のワーシップソングを訳して歌っている。
  2. 一般の曲を賛美歌にして賛美している。
  3. 色々な賛美集からコピーして教会独自の賛美集を作っている。
  4. 歌われているワーシップの訳が気に入らないので、一部を変えている。
  5. 礼拝にてパワーポイントで歌詞を写して賛美している。
  6. CDを作るのにJASRACのみに許諾を訊いている。
  7. ホールでコンサートをしたが、楽曲使用料は考えていない。
  8. ホームページで音楽を流している。
  9. 近くのレンタルショップでDVDを借りて子ども集会をした。
  10. 教会の図書貸し出しコーナーでDVDを貸している。
 基本的には、著作権者の許可を取らないで、無断で使用し、コピーすることは、「著作権法」という法律に違反する前に、聖書の「盗んではならない」(出エジプト記20:15)の十戒を破ることになります。著作権法の罰則規定も厳しくなっています。罰則は、著作権侵害、著作者人格権侵害ともに5年以下の懲役または500万円以下の罰金となっています。 なお、法人などが著作権等(著作者人格権を除く)を侵害した場合は、1億5000万円以下の罰金となります。またゴスペルの文化を創造、維持するためにも、「著作権」は大切です。

 森進一さんは、77年からこのように歌っていましたが、今になって問題になりました。私どもも著作権について考える必要がないでしょうか。

 詳しくは著作権情報センターのホームページ(http://www.cric.or.jp/)をご参考下さい。