書評Books 高校生の真の姿を丁寧に説き明かす


『高校生の居場所のつくり方』
中尾祐子 著
高校生聖書伝道協会 監修

B6判 1,400円+税
いのちのことば社

高校生、という存在について、みなさんは一体どのような「イメージ」を持っておられるでしょうか。この本は、私たちが持っている高校生の「イメージ」をよく掴みながら、「ホントはね」と、彼らの真の姿を丁寧に説き明かしてくれる一冊です。「現代の高校生は孤独の中に置かれています」と始まるこの本は、終始高校生の目線で語り続けてくれます。読み進めていくと、それは、高校生聖書伝道協会(hi-b.a.)の七十年近い高校生伝道の歩みがあってこそのものであるということが、よく分かります。
私自身、昨年の四月からキリスト者学生会という学生伝道の現場で働いています。その働きをしていく中で、時に「なんだかうまくいかないなあ」と思うことがあります。そんなとき、私は自問するようにしています。「学生を見くびってはいないか。」なぜなら、今までこの働きをしてきて、うまくいかないのは大抵、無意識のうちに学生を見くびって、自分と区別して考えているときだからです。「きっと彼らは〇〇だろう」と勝手に判断し、一人一人の「人格」に寄り添うことを放棄してしまっているときだからです。そんなとき私は、彼らが「学生」である以前に、神様に愛され育まれている一人の人であることを、忘れてしまっているのです。
この本最大の魅力、それはこの本が高校生を一人一人の「人格」として見る、温かい眼差しにあふれていることでしょう。それはそのまま、hi-b.a.が七十年近くかけて培ってきた眼差しなのだと思います。高校生の居場所として、彼らとともに生きてきた方々の眼差しなのだと思います。
この本には、現代高校生を取り巻く具体的な状況(S
NS、友人関係、家庭環境、性のことなど)もふんだんに盛り込まれています。それは単なる知識ではなく、彼らを一人のかけがえのない「人格」として見るための、大事な情報です。変わりゆく時代の中で、変わらない神様の愛をもって高校生に寄り添いたいと思わされる一冊です。