愛しきことば 第7回 つながりのぶどうの木
カリグラフィーアーティスト 松田 圭子
6月号の結婚式の話の続きです。式には、教会の信徒の方々約100人が、参列してくださいました。式の翌日は、日曜日で晴佐久神父(当時、所属教会の神父)が、結婚式のことをミサの中で、次のようにお話しくださいました。
「松田さんご夫妻が昨日ここで素晴らしい結婚式を挙げました。奥様は13年前に幼い2人の子どもを残しご主人が亡くなられました。この子を育てられるか、すごく不安になったそうです。そんなとき、今のご主人と巡り合い再婚なさいました。そのときのことを『私の不安な気持ちを分かってくれて、全面的にサポートしてくれる、私にとっては今の主人は救世主でした』と話されていました。救世主ってイエス様ですよね。イエス様みたいだった。まさに互いの気持ちや痛みをわがことのように感じる心で結ばれたのです。夫婦ってそういうものです。パートナーシップとは相手の心を自分の心にするチャレンジを続けることです。
そして、いろいろな事情で式をできないままになっていましたが、教会とつながりを持って、今回の感動的な結婚式になったわけです。宣教ということで言うならば象徴的だったのは、新婦のブーケトスだったと思います。結婚式の最後にブーケを投げ、取った人が次に結婚できるという習慣ですね。でも昨日は投げずにある人に直接渡しました。Sさんですね。『今日どうしてもこのブーケはあなたに受け取ってもらいたい』と言って渡しました。Sさん、受け取って泣いておられました。Sさんの気持ちは私たちも想像はできますけれども、一番その痛みをよく分かっていたのは松田さんだったのかもしれない。体験した者としてその痛みがどのようなものであるか、まるでわがことのように感じていたに違いない。だから『あなたもきっとこの試練を乗り越えて幸せになれる』そういう思いを込めてブーケを渡したのです。渡ったのは花じゃないですね。福音です。共感の思いです。これがキリスト教です。『あなたの気持ちがわかる』という福音を伝える、イエス様のサポーターの生き方です」……自分自身のことながら感動しました。まだこの頃、ことばを通してメッセージを伝えるという活動をしておりませんでしたが、今回改めて原点を確認した気がします。