時代を見る眼263 スポーツ -明日への起点- [2] ナンバー/ 数字
Japan International Sports Partnership(JiSP)代表
国分寺バプテスト教会 牧師
米内宏明
スポーツには数字がついてまわります。世界新記録という数字も残りますが、自己最低の記録も消すことはできません。ある数字は目標とされ、それも塗り替えられるときが来るでしょう。現在、日本の陸上界では100メートル走で10.00秒という数字を誰が最初に切るかが話題となっています。
そして、スポーツにまつわる数字は、時代が抱える課題を思い出させ、目を向けさせてくれることもあります。そのような数字として記憶されるものに「42」あるいは「1936」などが挙げられるでしょう。
「42」は米国野球のメジャーリーグで今も全球団共通の永久欠番となっている数字です。この番号を背負ったのは、ジャッキー・ロビンソンというアフリカ系初の野球選手です。彼は相手と味方の両チームから差別を受け、また観客からも差別される孤独なスタジアムと試合の中で、「やり返さないガッツ」を自分のものとした人物でした。その彼の功績をたたえ、差別を廃絶しようという意思表示として、メジャーリーグ全選手が年に一度、この背番号を付けて試合をします。
「1936」は、ナチス政権下のドイツでオリンピックが開催された年です。1936年8月に第11回夏季オリンピックがベルリンで開かれ、米国代表のジェシー・オーエンスは、4種目で金メダルを取りました。彼の名前が記憶されている理由は、史上初の四冠選手となったからだけでなく、独裁政権下の大会で人種差別の脅しに屈せず、アフリカ系の選手として活躍したことです。その葛藤を描いた映画の原題は、競争とも人種とも訳せる「Race」です。ちなみにこの大会で日本は三段跳びとマラソンで金メダルを取っています。マラソンの金メダリストは日本統治時代の韓国出身の選手でした。
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人間が抱える差別や戦争などの課題は、そのままスポーツの世界にも反映されます。その現実に直面し、そこに挑んだアスリートが残した数字は、尊敬をもって人々に記憶されることになります。聖書にも数字が記録されています。そこにも時代の課題と神の恵みが見えます。これから日本で開催されるスポーツの大きな世界大会は、ラグビー・ ワールドカップ、東京オリンピック&パラリンピックです。東京オリンピックの開催やその過程にすでに問題を抱えているともいわれます。だからこそスポーツを通して時代の記憶に何を残すのかを祈り求め、明日への起点としていきたいのです。
* JiSPは、Japan International Sports Partnershipの略て?、個人と団体の超教派のスポーツミニストリー・グループです。地域のスポーツミニストリーの交流、アスリート支援、ユースの育成、ワールドカップラグビーやオリンピックなどの大会を通しての地域貢献と宣 教を目指します。ISC(International Sports Coalition)の日本窓口て?す。