時代を見る眼265 変わりゆくものと変わらないもの [1] ラテンアメリカの現状
日本国際飢餓対策機構(JIFH)
ボリビア多民族国駐在スタッフ
小西小百合
ラテンアメリカは古くから男尊女卑(マチズモ)が深く根ざしてきた社会。凶悪犯罪、誘拐・人身売買や臓器売買、DV(家庭内暴力)、麻薬製造と密売、人種(民族)差別、女性差別、児童労働その他多くの問題が混在し、ボリビアでも目を覆いたくなるような事件のニュースが日々流れてきて、とても心が痛みます。
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ここ数年私が特に危機感を覚えているのは、テレビ各局が犯罪被害防止と通報を勧める何種類もの警告の広報を毎日頻繁に流しているほど、凶悪犯罪が日常茶飯事として起こっていることです。特に誘拐や欺きによる人身売買と臓器売買(密売のために臓器を摘出し死に至らせる)の被害防止の警告。毎日新たな行方不明者が報道されています。私のボリビアの上司の甥も誘拐され、国境を越えて連れ去られる寸前に奇跡的に救出されたことなど、ここでの暮らしは常に危険と隣り合わせですが、これらの問題の根底には霊的盲目と貧困があると強く感じています。
またラテンアメリカの課題の一つは人々の健康状態が悪いことです。それがその国の貧しさの指標にもなっていて、国連の統計を見るとボリビアが南米で最も貧しい国であることがわかります。例えば、1,000人当たりの乳幼児死亡数はボリビアが31人と南米大陸の中で最悪の状態です。また5歳未満の死亡数はボリビアでは1,000人中39人、ちなみにペルーは17人、日本では3人となっています。私が子どもの教育支援と地域の自立開発支援活動をしている標高3000~4000メートルのアンデスの高地アサワニ地域では、5歳未満の死亡数が1,000人中150人とたいへん高くなっています。その死因の第1位は慢性栄養不良です。5歳以下の慢性栄養不良の割合がこの地域では50%近くにも達しています。これは貧困のゆえに起こっている悲しい現実です。
現状の世界を見るときに問題が大きすぎて自分には何もできないと感じるときがありますが、私たちはまず自分の目の前にいる一人に関わることから始めることができます。そうすればやがて人々の霊・心の目が開かれて、貧しさの中でも互いに愛し合い隣人を大切にしていく社会が実現すると信じ、私たち日本国際飢餓対策機構は活動をしているのです。
*注1 中南米とカリブ海の計27か国の地域を総称したもの、注2、3 ユニセフ2015年調べ。
注4 FH Bolivia ベースライン2014