書評 聞く耳が養われる説教 

『ますますそのように
歩んでください
―テサロニケの教会による模範』
遠藤嘉信 著

四六判 1,300 円+税
いのちのことば社

日本同盟基督教団 習志野台キリスト教会 牧師 丸山園子

 

遠藤嘉信先生が召されて九年……別離の悲しみとともに、キリスト教界リーダー損失!と思っていた私にとって、説教集が次々出版されることは、大きな喜びとなった。もちろん個人的な喜びに留まらず、後世への貴重な遺物となるであろうから。神様は、このような形で、みわざを進められるということを思わされている。
書籍なので、読んでいるはずなのに、聴いている思いになる。読み進むにつけ、聞く耳が整えられ、養われていく。静かに、湧き上がるように、主の思いに満たされてゆく。主のみ声を聴き、日常生活でこんなふうに生きたいと素直に思う。神様の愛に心が動かされる。交わりの中で家族への思いに気付かされた青年の告白、留学時代に味わった苦い体験、お母さんの祈り、幼少期に賛美した「まもなくかなたの」にこめられた希望。芳子先生が《あとがきにかえて》に、病床に伏した遠藤先生がおっしゃった言葉を記されている。「これからは、自分が講壇で語ってきたみことばの通りに生きてみよと、言われているような気がする」と。そして、主から与えられたその使命を見事に果たした、と。その最後の日々、遠藤先生は、心の内に「まもなくかなたの」を口ずさみ、「天に向かって歩むための大切な準備の時」を過ごされたのかな、と思う。私の最期も、かくありたい。
ことにテサロニケは、迫害の艱難の都市。そこに住むクリスチャンにたちに届けられた励ましの手紙。これからの日本に生きる私たちが、耳を傾けるべき励ましのみことばだ。御国に向かって進むために、使命を果たすように生かされている私たち。困難な時代に立ち向かうぞ、と肩を張るように励まされるのではない。みことばを聞いて、静かに、湧き上がるように、神の御手にゆだねていこうと思うようになる。