書評Books 神さまのところから、 ポロンポロンと落ちてきたもの?
三浦綾子読書会 代表 森下辰衛
『ヘブンズドロップス』
みなみななみ 著
B6変判 1,300円+税
フォレストブックス
みなみななみさんに出会ったのは三浦綾子さん原作の絵本『したきりすずめのクリスマス』の原画展のときだった。ものすごく謙遜でいて、笑うときや驚いたときは声の大きい、とにかく飾らないかわいい人で、少しずつお付き合いしている間に、この飾らなさが自分の足と五感で世界を見てきた彼女の豊かな実力と自信から出ているものでもあり、また創作の武器でもあるのだと感じるようになった。
絵ももちろん素晴らしいが、それ以上にことばがいい! と思うのは私が文学系だからだろうか。「日めくりヘブンズドロップス」に出会ってからは、すっかり惚れこんで、たくさん買って配ったりもした。ちょっとうならされたのだ。日本人の心に届くように、とにかくそれを第一に考えていた三浦綾子と同じものがある!と分かったからだ。
彼女が経験を自分のことばにする能力、自分の形と色にする力はすごい。聖書のことばの経験を自分の色と形とことばにしたのがこの本だ。飾らない普段着だから、身体にしっくりくる。翻訳の正しさに重点が置かれる聖書の言葉の硬質さに裂け目ができて、思いがけず、生まれたての、やわらかな草の芽のにおいのするものになっている。そして、そこここに光が。おや、まだこんな光があったのか? と気づかされるのだ。
書評を頼まれてから、考えた。「ヘブンズドロップス」ってなに? 日本語にするならどう訳す? ななみさんから、なぞなぞで試験が課せられているような気もしてきた。
ななみさんの心に降りてきた聖書のことば? 泣いてくださる神さまの涙? それとも、まどみちおが歌ったように、さびしい子どもの心を楽しませてくれるいろんな色のドロップス? ヨハネの手紙第一、4章9節を彼女はこんなふうに受け止めている。
「ひとり子を この地に 送って 神さまが 伝えたかったこと こんなにも あなたを 愛している」
うつむいて枯れかけた心を生き返らせるのは、神さまのところからこんなふうにポロンポロンと落ちてきたものなのだと、わからせてくれるステキな本だ。