『世の中心に立つ
霊性リーダーシップ』
ジン・ジェヒョク 著
松田悦子 訳
四六判 304頁 定価1,600円+税
日本イエス・キリスト教団 福岡教会 牧師　横田法路
昨年ジン・ジェヒョク師と会う機会があり、約一時間いろいろなテーマについて語り合った。会話の端々に、お人柄、牧会哲学、リーダー観が現れていて、新鮮な印象と好感を持ったのを覚えている。特に印象深かったことは、定年を迎えたとき、どういう牧師として覚えられたいかということについてである。「自分は『あの先生は、りっぱな教会堂を建てた』とか『あの先生は素晴らしい説教者であった』ではなく『あの先生は、自分たちのことをよく愛してくれた』と覚えられるようでありたい。」ここに、ジン先生の霊的リーダーシップの核心があると思う。
今回、ジン先生の著書『世の中心に立つ霊的リーダーシップ』が翻訳出版されたことは、日本のクリスチャン、教会にとって、大変有意義なことである。本書は第一に、しっかりとした学問研究の土台に立ったリーダーシップ論である。通常書店に並んでいるリーダーシップ関係の本は体験的なものが多いように思うが、ジン先生はこの分野を専門とし、米国フラー神学大学院において博士号を取られた。そのような研究から得られた知見や洞察が、本書の至るところでにじみ出ている。
第二に、実践から生み出されたリーダーシップ論である。堅固な学問的基盤に立つ研究ではあるが、机上の空論ではない。それは先生の長い牧会経験の中で、実践され、検証されてきたリーダーシップ論である。地球村教会は、毎週三万人が礼拝をささげ、百二十人の教職とともに、今も成長を続けている教会である。ジン先生は、そのリーダーとして今も教会を導いている。
第三に、包括的なリーダーシップ論である。リーダーシップのある特定の面だけを取り上げるのではなく、重要な側面をほとんど全て網羅している体系的な書物である。今後、リーダーシップ論の教科書として、神学校や教会で用いられていくのではないだろうか。
「霊的リーダーシップ」とは、単に世と異なるリーダーシップというのではなく、世に影響を与えていくものであり、教会だけではなく、この世にも通じる卓越したリーダーシップである。それはポストモダンの時代においても、注目されるリーダーシップである。その核心は、サーバントリーダシップをさらに進めた「十字架リーダーシップ」である。この重要な書物を、ぜひ、牧師も信徒も手にとって、熟読されることを心からお勧めしたい。