試聴CD ロックでゴスペルな快作

「いっぱい! いっぱい!」
三上勝久

全8曲 2,000円+税
制作・販売元 ライフ・クリエイション
TEL.03-5341-6927(48815)
<収録曲>
新しい命 / 栄光あれ主に / 計画 / 岩木山 / いっぱい! いっぱい! / 天の故郷 / 全地よ / 解き放てわが心よ

サルーキ= 千代延大介

ぼくは高校生のころ、田舎にあった唯一のCD屋でブルース・スプリングスティーンというアーティストを知った。ぼくは当時クリスチャンでもなく、田舎の進学校に通う落ちこぼれそうな生徒だった。そんなぼくはロックンロールが持つリアルなメッセージと熱いサウンドに勇気をもらって日々を過ごしていたのだ。今回の三上さんのCDを聴いて最初に感じたのは、このブルース・スプリングスティーンのような無骨で生々しくリアルだけど、どこか爽やかなイメージだった。日々の生活は大変、だけど希望がある、というような。
ロックであるか、ロックでないか、その境はリアルかリアルでないかであり、ロックというのは、一つの時代のメッセージだったと思う。イエスが来た二千年前も、ある意味で閉鎖的な社会だった。そこに、癒しと解放を与えに来たのがイエスだったのだと思う。リアルさに欠ける外見ばかりの宗教学者や指導者たちに、イエスはリアルを問いかけたのではないか。そして泥まみれの生活の中でも、本当に神様に信頼して感謝する心、これこそ神様は求めておられるのだ、と。三上さんの作る音楽もまたそれに近いものを感じた。心の傷や葛藤もさらけ出し、ゴスペルだけどロック。無骨な歌に爽やかな70’sサウンドが絡まり、アルバムは進んでいく。そしてラストの弾き語りナンバーが一人ひとりの心にリアルを問いかけ、刺し通す。福音は素晴らしいものであるはずなのに、なぜかこの日本ではいまいち届かない。イエスを心に信じた者が、それぞれの生活の中でイエスを心の中心にして生きる。そして周りの人たちと関わっていく。不必要な自分のプライドとの戦いにもなる。自分がイエスを信じたことによっていかに罪人であり、不完全なものであるのかを思い知らされる。
そしてすべての不純物が取り去られ、さまざまな苦難を通して焼かれ、仕上がった美しい陶器のような存在になるとき、はじめて目に見えない神様がその人を通して表されるのではないか。 そんなインスパイアを投げかけてくれるようなロックでゴスペルな快作である。