書評Books 山花さんならではの温かい世界
落語家・女優 露のききょう
『神様がくれた風景』
やまはなのりゆき 著
A5変判 1,300 円+税
いのちのことば社
満を持して、山花典之さんが水彩画エッセイの本を出版されたというので、さっそく手に取って開いてみました。そこには山花さんならではの温かい世界が広がっていました。まず何といっても、表紙をはじめ、中にも描かれている絵が優しいのです。この『いのちのことば』の表紙のために描かれた絵も何点か収録されていますが、どこか懐かしくて、いつかどこかで出会ったことがあるような、そんな風景が広がっています。
また、本文のエッセイがとても読みやすいのです。何というか、奇をてらったところがなく、生活の中でのキリスト教や聖書とのかかわりを、一年・十二か月の中に、現在と過去をうまく交錯させながら、愛がいっぱい詰まった文章が、さり気なく綴られています。ところどころにはみことば(聖句)も登場し、それが適材適所で「なるほど」とうなってしまうことも!
その他、昭和の北海道で幼少期を過ごされた山花さんの子ども時代のエピソードも微笑ましく、普通の少年が、どんなふうにして漫画家になったのか。その漫画家さんが(ご本人いわく)「酒、タバコ、夜遊びに興じる悪漢」から、どうしてクリスチャンになったのか。断片的ではありますが、興味深く拝見することができます。
圧巻は、「マンガ 母がもらった天国への切符」です。
何度読んでも、ウルウルしてしまいます。福音が直球で語られています。「事実は小説より奇なり」の言葉が浮かぶ、ある意味、奇跡的なエピソードですが、家族、特に親御さんの救いについてのヒントがここにあるかもしれません。そして「マンガなんて読んだことがない」「マンガ?どうもチョッと……」という方でも、もちろん私のように「マンガ大好き!」という人にも、だれにでも読みやすいマンガです。
この本は、一見、「漫画家」という、少し特殊な職業の山花典之という人が、実は普通の人で、その普通の人が神様とともに毎日を歩んでいくということが、どんなに幸いなことなのかが伝わってくる、そんな一冊です。