書評Books 傷ついた心にどのように対応したら良いのか
『“あわれみ”の心 イエスの道』
パスカル・ズィヴィー 著
A5判 1,100円+税
いのちのことば社
日本同盟基督教団 新津福音キリスト教会 牧師
松永堡智
著者はすでに『親は何を知るべきか』(一九九七年)『「信仰」という名の虐待』(二〇〇二年)、『「信仰」という名の虐待からの回復』(二〇〇八年)、『統一協会から愛する人をたすけるために』(二〇一〇年)、と出版しておられます。
これらの本に一貫して流れていることは、心のことであり、傷ついた心にどのように対応したらよいのか、という主題です。このたびの『“あわれみ”の心 イエスの道』もその流れの中にあるように思います。一九九五年のオウム事件以来、「マインド・コントロール」という言葉がしばしば使われるようになりました。著者は、悪質なコントロールを憂いて「マインド・コントロール研究所」を設立し、苦しむ人々のカウンセリングに取り組み、また相談に乗ってこられました。
その相談の中には、キリスト教会の信者からの相談が多く、“あわれみ”の心、キリストの道と随分かけ離れたケースが多かったようです。それらに光を当てて聖書のことばの本来の意味を確認しながら、現状を考え直してほしいという願いが見えます。
五章「『“あわれみ”の心』を窒息させる危険な思考システム」は「三つの危険な思考システム」として提示されていますが、「教会は善、一般の世界は悪」「現在よりも過去が高く評価される」「支配者のように」の三つです。いずれも教会の中に、特に指導者の中にあり、信徒が苦しみ、傷つき、相談が絶えないというのです。
これらに対処するために著者はあとがきで「しかし、イエス様はこの『“あわれみ”の道』によって、もう一つ重要なことを教えてくださいます。それは、『勇気』です。四つの福音書を読むと、イエス様の『あわれみ』と『勇気』のつながりをはっきりと理解することができます」と記します。一日も早く「あわれみの心が教会に定着しますように」と祈ります。