特集 今も働く神の歴史の物語 「信仰遺産」の宝庫を堀り当てて
カラー写真もたっぷり!
『写真で訪ねる信仰遺産―日本キリスト教史の夜明け』
伊東泰生:写真 熊田和子:文
B5変型判 64頁
定価1,400円+税
編集ライター 熊田和子
本書は二〇〇六年から二〇〇七年にかけて、月刊『百万人の福音』に連載した記事をまとめたものです。そこに、日本宣教の始まりであるフランシスコ・ザビエルの時代の遺産について昨年末取材したものと「探訪まっぷ」を巻末に加え、一冊にしました。
発売して数か月、「楽しみながら読んでいます」「写真が素晴らしくて見ごたえがある」「クリスチャンではない夫が、とても興味をもって読んでいます」「まっぷを見ながら旅をしてみたい」など、うれしい声が届き、単行本という形で出していただいたことを感謝しています。
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十数年前、昭和初期の日本人宣教師の伝記を書きました。それがきっかけで、写真家の伊東泰生氏から、「明治初期のクリスチャンについて書いてみませんか」と声をかけていただきました。ご本人もクリスチャンとして、当時の信仰の諸先輩の生き方にとても感銘を受け、少なからず調べておられたようです。
私は、若い頃からキリシタン時代のことに関心をもって入れ込んでいましたが、幕末・明治は範疇ではないと、ほとんど何も知らない状態でした。以前から、明治初期のプロテスタント・キリスト者たちはあまりに立派過ぎてついていけず、名前を聞いただけで尻込みするしかなかったのです。
しかし、「必ず得るところがあるから」と熱心に勧められ、『百万人の福音』に企画提案することで、否応なく? 話が進んでいきました。当時の編集長も、「そういう歴史的な重みのある読み物が欲しかった」と、すぐに連載の運びとなったのです。驚きました。「そもそも私は一介の編集者だし……歴史的な読み物なんてムリ、しかも一年の連載なんてできるわけない、どうせボツになる」と勝手な方程式を立てていたのですから。
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編集長氏は、条件は「足跡から信仰が浮き彫りになること」「男性も楽しんで読めるもの」と言われただけ。いざ連載が始まってなお私が、「自分は学者でも研究者でもないし……書けそうにない」と逃げ出しそうになると、「学者でなく素人目線でいい、そのほうが面白い」と励まされ、いつしか一年が過ぎていました。
この連載のため、改めて幕末から明治にかけてのプロテスタント教会やキリスト者のこと、江戸から明治への変遷の時代、禁教令が解かれたと同時に来日した宣教師たちのことなど、史料を読む機会を与えられました。すると、これまで自分が敬遠してきた長い年月が惜しまれるほど、そこは確かに「信仰遺産」の宝庫でした。
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当時のキリスト者たちは、その時代だからこその数々の試練を経験し、あるいは決断をして信仰生涯を全うしています。時代が違うとはいえ、彼らの歩みから、今に生きる私たちも多くの得るところがあります。本書ではそれを文章とともに、その時代の空気が感じられるように写真を大きく配置していただきました。自分で執筆・編集しておきながら、何度見ても飽きることがありません。それはひとえに、建築写真を専門とされている方が信仰の目をもってその時代を写し撮られたからであり、デザイナーの大胆なレイアウトに負うところが大きいと感謝しています。最後に、企画・撮影をされた伊東氏のコメントをお伝えして、その思いをお分かちできたらと思います。
「外国人宣教師を含め、明治時代に暮らしたキリスト者たちの信仰姿勢やその生きざまは、まさしく命懸けのものに感じられ、私にとっては圧倒される存在としかいえません。それら、信仰者たちに関する幾つかの感動すべき足跡を取り上げ、何とか写真とともに紹介できればと思い、『百万人の福音』誌に連載企画を発案しました。
撮影するに当たっては、今までほとんど公にされてこなかった貴重な品を加えることも考慮しました。紙面から信仰者の息吹みたいなものが、多少なりとも伝わるようでしたら、企画した意義があったかと思います。」