書評Books 何とも贅沢な一冊

保守バプテスト同盟 盛岡聖書バプテスト教会 牧師 近藤愛哉

『時にかなって』
太平洋放送協会(PBA)企画構成

四六判 287 円+税
いのちのことば社

何とも贅沢な一冊。それが太平洋放送協会のメッセージ集『時にかなって』を読んでの感想です。値段はわずか三百円ほどのこの薄い一冊の中に、十一人の説教者たちによる実に四十一ものメッセージが収録されているのです。それは、ラジオやテレビの番組の約三分という時間の中で語られたものです。しかしこの三分のために各説教者によって無駄なく選び抜かれた言葉で編まれた一つ一つのメッセージが、ページをめくる私の心に迫ってきました。
ラジオやテレビの先の不特定多数の視聴者に対して語りかける言葉でありながら、それがこの「時代」に対する具体性と、「人」という存在に対する普遍性とを含んだ言葉であることにもすぐに気づかされます。直接は見ていないけれども確かにそこで耳を傾けているであろう存在に、「言葉」を届けようとする説教者たちの熱い思いが浮かび上がるのです。しかし同時にそれは、人にご自分のことを知ってほしい、聖書のみことばに生かされてほしい、真理に気づいてほしい、励ましを受けてほしい、悔い改めて立ち返ってほしいと、強烈に願っておられる神様ご自身の情熱の現れともいえるでしょう。私自身が一人の読者として教えられ、励ましを受けつつ、この説教は未信のあの方にも読んでほしい、この説教はぜひあのご夫妻にも読んで力づけられてほしい、などと思いながら読み進めたことでした。
活字でありながら、説教者たちのそれぞれの個性に基づく声や語り口が思い起こされるのも、またこのメッセージ集を読むことの楽しみといえるでしょう。
四月十日、今メッセージ集でも最初にそのメッセージが収録されている羽鳥明先生が天に召されたとの報が入りました。「信じて、祈り、待つ。愛して、祈り、待つ。」(一三頁) 祈りの人であった羽鳥先生の優しくも毅然とした言葉が迫って来るようでした。一日一編ずつ味わって読むのもよいでしょう。プレゼントとして贈るのもよいでしょう。ラジオやテレビの番組と併せて、このメッセージ集が豊かに用いられますように。