書評Books ヘブル語の学習で大切なことは、ヘブル語に慣れること

御茶の水キリストの教会 伝道者補佐
キリストの教会伝道学院 教師
相川忠義

『独習 聖書ヘブル語原典入門』
野口誠 監修
A5判 3,800円+税
いのちのことば社

礼拝説教等で「この言葉は原語のヘブル語では○○で、△△といったニュアンスがあります」といった説明をお聞きになったことがある方は少なからずおられることでしょう。そのような説明を受けますと、以前は気づかなかったみことばの豊かさに気づかされる場合が多々あります。そして「ヘブル語について学んでみたい」と思われる方もおられることでしょう。この本は、そのような方が聖書のヘブル語を独習できるように書かれています。また、ヘブル語を一とおり学習したことのある方がヘブル語文法を復習・参照するうえでも、十分に用いられる本だと思います。
この本の「はしがき」には、語学学習で大切なことはその外国語に慣れることだと記されています。そしてこの本には、ヘブル語に慣れ親しむための工夫がさまざまな形でなされています。例えば、練習問題(巻末の付録に解答もあります)はもちろんのこと、「学習メモ」や「学習余滴」と題するコラムも設けてあります。これらのコラムでは、文法的な解説にとどまらず、聖書で使われているヘブル語の語句等の持つ深い意味について解説してあり、ヘブル語を学ぶことの意義や楽しさを感じることができます。「学習メモ」の一つでは、イエス様が「律法の一点一画さえもすたれることはない」と言われたことの意味がヘブル語の文字という観点から説明されていて、みことばの奥深さを感じさせられました。
この本のヘブル語文法の解説はきめ細かく丁寧で、付録の動詞の変化表や単語集も充実しています。説明や付録が非常に充実していますから、本全体の分量もそれなりにあります(全体で三二七頁)。しかし、「はしがき」には「最初は、わかるところだけ読んでいき、そのほかは必要な時に参照するのも一つの方法である」とあり、私のような語学学習が苦手な者にも安心感を与えてくれます。初歩的事柄からやや細かな点まで解説されていますから、初心者から上級者まで、幅広い方々に用いられる文法書だと思います。