書評Books 「教会である」とは何かを教会に問う
保守バプテスト同盟 北上聖書バプテスト教会 牧師 佐々木真輝
『痛みを担い合う教会―東日本大震災からの宿題』
第6回日本伝道会議「痛みを担い合う教会」プロジェクト 編
A5判 1,200円+税
いのちのことば社
本書は福音的であることを自認する諸教会に「教会であること」の意味に正面から取り組むよう訴えるものです。
「傷みを担い合う教会」というテーマは言葉としては何となく分かりますが、いざ「痛み」とは何か、「担い合う」とはどういうことか、そもそも「教会」が痛みを担うとはどういうことかと問われると、案外答えに詰まるものです。
そんな問いに被災地支援の現場に立ち続けた三人の視点と、震災以前から地方伝道や社会的弱者との共生を課題としてきた三人の視点が組み合わさることで、日本のキリスト教界が抱え続けている課題を立体的に浮かび上がらせています。
松田師は「痛み」の問題を軸に、人間理解、福音理解を深める必要性を訴えています。その上で支援や社会貢献を「社会派」の後追いではなく、深められた福音理解に基づくものとしていくことを呼びかけます。
木田師は原発事故の被害という特殊な状況の中で、痛みを「担い合う」ということを軸に、教会の交わり、とくに諸教会間の交わりやネットワークの可能性に期待を寄せつつ、教会が本来持っている、生きて働く豊かな交わりが形成されることを大きな願いとして訴えています。
また、プロジェクトリーダーである若井師は、痛みを担い合う「教会」を軸に、公同性や歴史性を意識しつつ、地域に置かれた教会のあり方を問いなおしています。その上で、「震災は過去のものにされようとしている」現実の中で「大震災を忘れない」とはどういうことかと問いを投げかけ、「あの時、学んだこと、経験したことを、今、置かれているところで実践するということ」と語っています。
地方伝道の難しさや共生の課題は、訴え続けられ、学ばれ続けてきました。しかし震災を通して、それらが特別な状況の問題ではなく、この痛んだ世界に遣わされた諸教会の本質に関わる課題であり、具体的に行動するよう迫られていることが本書によって明らかにされていると思わされました。