書評Books 行間を埋め、聖書理解を深めてくれる
キリスト伝道隊国内宣教師 大塩英子
『聖書の女たちから現代の女たちへ』
キャロリン愛子ホーランド 著
B6判 1,200 円+税
いのちのことば社
こんな視点があるのかという驚きと気づき。時代背景、当時の女性たちの生活についての丁寧な解説を通して、聖書の時代を生きた女性たちの生き様が、浮かび上がってくる。
取り上げられた女性たちは、エバ、ハガル、タマル、ヨケベデ、デボラ、ハンナ、アンナ、サマリヤの女の八人。私の心に残ったのは、ハガルとタマル。どちらの女性も、ネガディブなイメージのほうが大きく、聖書を読むだけでは、幸いな人生を生かされたように思えない。彼女たちの人生に、神はどう関わったのか、彼女たちは神にどのような応答をして困難な人生を生き抜くことができたのか。また、神は彼女たちの生き方をどうご覧になっていたのか。
高慢さが取り去られ、謙ることを教えられたハガル。息子と二人だけで荒野に放り出され、絶望したときの神の介入。シングルで子育てをされている方にとって、ハガルの章は特に励まされるのではないかと思う。
タマルの章では、心から唸らされた。タマルにいい印象を持っている人はいないと思う。男性なら彼女のような女性を恐ろしく思うだろう。不公平を訴える場も、とりなしてくれる人もいないとき、私たちはどうするだろうか。タマルは泣き寝入りせず、自分の権利を取り戻すための策を練り、行動に移した。しかしそれは、失敗すれば命を失うほどのリスクを伴うものだった。現代の私たちには、到底理解できないタマルの計画と行動だが、著者は「興味ふかいことに聖書がタマルの行為を非難することはありません」と記している。この一文を通して、私のタマルという女性への理解と視点がガラリと変わった。
著者は、日本人女性の弟子訓練に重荷を負い、長年、女性たちへのバイブルスタディを導いてきた方。聖書に登場する女性たちの生き方、神との関係から教えられることを通して、現代に生きる私たちに、聖書の神をもっと身近に感じてほしいという著者の願いが込められている。聖書の行間を埋め、聖書理解を深めてくれる一冊である。