書評Books 人々の悩みや悲しみに対して、時代を超え慰めと励ましを与える

『いこいの水のほとりにて
―魂への慰めのことば』
C・H・スポルジョン 編
佐藤 強 訳

A5判 3,000円+税
いのちのことば社

淀川キリスト教病院 理事長 柏木哲夫

このたびいのちのことば社より、C・H・スポルジョン編、佐藤 強訳『いこいの水のほとりにて?魂への慰めのことば』という聖書日課が発売されました。貧困、犯罪、疫病、孤児であふれかえっていた十九世紀のロンドンで、厳しい現実の中で失望し、痛む教区民を前に、「説教者の中の説教者」と呼ばれたスポルジョンが実際に語った説教が収録されています。
スポルジョンの著書はすでに十数冊日本語で翻訳出版されていますが、訳者の佐藤強先生が、本書を世に出したいと願われた理由が「あとがき」に記されています。先生が淀川キリスト教病院の伝道部でチャプレンとして働いておられたとき、本書の原書をモア宣教師の奥様、モリー夫人からクリスマスプレゼントとしていただかれたそうです。当時私も同病院のホスピスで働いていました。
本書の特徴を一言で言いますと「時代を超えた〈慰めのことば集〉」だと思います。スポルジョン(一八三四―一八九二)が生きた時代と現代との間には百二十年以上の隔たりがあります。しかし、本書を読んで感じるのは、この隔たりにもかかわらず、人々の悩みや悲しみ、苦しみなどは避けて通ることができないものとして存在し、それに対して聖書のみことばが慰めと励ましを与えるということです。
聖書は実に不思議な書物です。課題をもってひもとけば、必ず課題に対する答えが見つかります。進むべきか、留まるべきか、右へ行くか、左へ行くか……祈りつつ、みことばを求めれば、必ず答えは見つかります。ただ、時には神様は私たちにすぐに答えを出さず、忍耐を教えられることがあります。
本書は五百二十七ページの大冊です。ただ、一日目、二日目というように一ページと少しの、みことばとスポルジョン独特の解説的短文が三百六十六あります。毎日一つずつ読めば一年で通読できます。訳はわかりやすく、行間に訳者の信仰と温かさが感じられる好著です。