書評Books どんな人も神は見捨てない。この神の約束を思い起こさせる
『クロスロード―回復への旅路』
ウィリアム・ポール・ヤング 著
結城絵美子 訳
四六判 2,000円+税
フォレストブックス
小説やサイエンス・フィクション、ミステリーやファンタジーに対して少なからずとも否定的な思いをもっている人がいる。確かに「事実は小説よりも奇なり」と表現されるように、ノンフィクション、つまり、事実に基づいたドキュメンタリーの多くは興味深いし、それらから多くを学ぶことができる。
しかし、古くから人々はたとえ話や物語、例えば、ジョン・バニヤンの『天路歴程』やC・S・ルイスの『ナルニア国物語』シリーズ、J・R・R・トールキンの『指輪物語』から、多くのことを学び、現実の世界で生きる勇気を見いだしてきた。『神の小屋』もその物語の力を享受できる作品である。
本書を一読してまず感じたのは、旧約聖書にある次のことばだ。「主ご自身があなたに先立って進まれる。主があなたとともにおられる。主はあなたを見放さず、あなたを見捨てない。恐れてはならない。おののいてはならない」(申命記31・8)
「魂の旅」へと主人公(トニー)を神は導かれる。そして、回復の道をともに歩んでくださるのだ。
また、イエスがトニーに「きみは共同体の中で生きるようにと、共同体によって造られたものだから。共同体そのものである神のかたちに造られた存在なんだからね」と語ったことばは、関係性の中で生きることの大切さを教える。
さらにトニーを導くことばの数々をとおして、イエスは自身がどのような存在であるのかを伝えている。イエスだけでなく、聖霊を象徴する「グランドマザー」という登場人物にも導かれ、さまざまな真理を探る旅を続ける。そして、神に信頼することの大切さを受け入れていく。
どんな人も神は見捨てない、神はともにおられる、この真理、そして、この変わることのない神の約束を本書は思い起こさせてくれるが、主人公がそのことを知る旅をたどることによって、読者もこのことに気づき、確信する。私たちもトニーといっしょに「イエスがいる!」と叫ぶことができるのだ。