書評Books 自分の中に閉じこもる中高生を、聖書の物語の中に招いてあげたい
『SMILEFULL DAYS Ⅰ―今日から、笑顔で歩み始めるための12の物語』
沖崎 学 著
新書判 1,300 円+税
フォレストブックス
キリスト者学生会 総主事 大嶋重徳
この著者を知っている。朝早くから生徒を笑顔で迎え、数十名の生徒たちが、学校礼拝の前に沖崎先生がする聖書の学びに集まってくる。彼女たちは「おっきー」と呼び、沖崎先生はうれしそうに「なんだよ?」と応える。『SMILEFULL DAYS』は、金城学院高校の宗教主事をしている沖崎学先生が、女子中高生たちの痛みや悲しみ、喜びや笑いをともにしてきた中で生まれた優しい本である。
「笑顔で歩み始めるための12の物語」という副題は、笑顔になれない多くの中高生達のそばにどれだけ寄り添ってきたかを伝えている。まわりの生徒と自分を比べて自信を失って、学校に突然行けなくなる中学生、高校生がいる。学校に通い続けながらも「いい子」の仮面をかぶり続け、そんな「自分が嫌い」でしょうがない。「やりたいことが見つからない」、「失敗するのが恐くて踏み出せない」。そんな生徒たちの声をじっと聞きながら、学校での聖書の時間に語り続けてきた牧師であり教師の言葉がここにある。何とか彼女たちに届きたい。彼女たちの言葉で、聖書を表現したいと願いながら記された一冊だ。
聖書の12の物語が、生徒たちに伝わる言葉で描かれている。聖書テキストから外れることなく、聖書の描く光景を豊かに読み広げていく。この本のキーワードは「絵が浮かぶこと」だ。沖崎先生の説教を聴いている、あるいはこの本を読んでいる者達の頭にはっきりと浮かぶ「絵」がある。YouTubeで育った世代に、パワーポイントを用いずに言葉で「絵」を浮かばせる勝負がここにある。聖書の時間はつまらないと決めつけている生徒たちの頭に、聖書の語りかけるイメージ豊かな世界を見せつけに行こうとする説教者の努力だ。教会学校の教師たちにも、ぜひトライしてもらいたい「届く」表現の数々に触れてもらえたらとも願う。
何より私たちのそばにいる、一学期が終わって、学校生活に疲れてきている子どもたちの顔が心に浮かぶ。あの子にもこの本をプレゼントしてあげたい。自分の物語に閉じこもってしまっている彼女たちを、聖書の語る大いなる物語のなかに招いてあげたいと思うのだ。