変わらない優しい心で書かれた新しい本
社会福祉法人四恩会理事長
日本ナザレン教団昭和町教会牧師
杉谷乃百合
『優しい心はたからもの』
福井達雨 著
B6判 1,300 円+税
いのちのことば社
『優しい心はたからもの』の著者・福井達雨氏は、イエス様のことが大好きな、言葉と行いの人です。イエス様を頭に、止揚学園の仲間と職員たちとゆっくり歩みながら、八十余年の人生をキリストの愛に生きてこられました。この本は、止揚学園の仲間たちの言葉と思い、福井達雨ヒストリー、福井リンゴー(lingo)、がたくさん詰まった、読み応えのある本です。
リンゴーとは、独特な言葉づかいや言い回しを意味します。福井氏は、意味の近い二つの言葉を選択して、それらを定義づけて比較し、言葉を探り、深めます。そして、力強く問題提起をします。「人・人間」「感情・感性」「非難・批判」「慈悲・愛」「愛・愛情」「キリスト教主義福祉・キリスト教福祉」など、私たちが真剣に生きようとすると対峙しなくてはならない、“人間”にとって大切なリンゴーがこの本にはたくさんあります。止揚学園の「止揚」とは、二つの矛盾要素を対立させ、闘わせ、その過程で発展的に統一する、哲学の概念です。この本は、止揚学園を創設し、六十年歩んだリーダーだからこそ紡げるリンゴーで綴られています。
学生時代から福井達雨氏の著書を愛読してきた者として、『優しい心はたからもの』の書評を依頼されたことの不思議を感じます。三十年経つと、新しかった物は古いと言われ、物事の基準も世の中の流れもガラリと変わりました。著者から直接うかがった話ですが、止揚学園の歩みの中で仲間の声を世と人々に代弁すべく、たくさんの人たちと戦い、喧嘩をし、“非難”をされてきたそうです。しかしそれらの戦いが優しさへと止揚して、三十年経っても変わらない優しい心で書かれた新しい本を手にすることができました。
大切にしたいものがたくさん入っている宝箱のような本です。