野の草を見つめながら 第2回 小さな存在にそっと寄り添って
フォトグラファー 市川五月
冬の寒さが本格的になってくる東京2月。都会っ子は寒さに弱く、本当に春はやってくるの? なんて思ってしまうくらいの落ち込みようです。近年は温暖化の影響で冬がとても寒くなり、雪も多くなりました。一昔前は雪かきなんてまったくする必要がなかったのに、今では20センチ積もるだけで大変な騒ぎです。雪かき用のスコップなんてほとんどの家が持っていないのではないでしょうか。
今回の表紙の写真は、雪解けの、ある晴れた日に撮りました。散歩をしながら近所を歩いていると、なにげなく置かれたスコップが目に飛び込んできました。そして、すぐそばには野の草が生えていたのです。野の草を探しながら歩いている私は、神様が見せてくれた景色だとうれしくなりました。よく見ると、陽の当たる場所と陽の当たらない場所があって、どちらにも草が生えています。陽の当たらない場所にスコップがそっと寄り添うように置いてありました。
スコップは人が使う道具ですが、そこに人の温もりが微かに残っているようでした。日陰は寒くてひんやりとした空気。なんだか神様が陽の当たらない小さな存在に、そっと寄り添っていてくださるような気がして1枚の写真に収めました。
神様の愛はどの人にも同じように注がれていますが、聖書を見るといつも弱い者の上にあわれみが注がれており、この景色はそんな慈愛に満ちた神様の存在を思い起こさせてくれました。私もこんなふうに人々に寄り添えているかな? そんなふうにリマインドさせられたのです。
「神は、どのような苦しみのときにも、私たちを慰めてくださいます。それで私たちも、自分たちが神から受ける慰めによって、あらゆる苦しみの中にいる人を慰めることができます」(Ⅱコリント1・4)
この1枚の写真を見るときに、神様がどんなときも共にいて私たちを励ましてくださるということを感じていただくと同時に、私たちも周りの人々を愛し、ただそばにいるだけでも慰めることができることを知ってもらえたら幸いです。