書評Books 怒りの問題で悩む人に寄り添ってくれる本 『上手に怒る人になる―子育てが楽になるアンガーマネジメント』
怒りの問題で悩む人に寄り添ってくれる本
キリスト教書翻訳者・霊的同伴者 中村佐知
『上手に怒る人になる―子育てが楽になるアンガーマネジメント』小渕朝子 著
B6判 1,200円+税
フォレストブックス
夫(妻)のことも子どものことも愛しているのに、気がつくといつも怒ってばかり。そんな自分が情けない、自己嫌悪、助けてほしい、という方はいらっしゃるでしょうか。もしあなたがその一人なら、喜んでください。本書はあなたの祈りへの答えです。
著者の小渕朝子さんは、怒りの感情をコントロールするとは、単に怒りを抑圧したり、我慢したり、一切怒らなくなるというものではなく、怒る必要のないことは怒らない、必要のあることは考えてきちんと怒ることだ、と説明します。本書は、そうできるようになるための十二のスキルと、その具体的な実践方法を紹介します。アンガーマネジメントには二つの側面があります。目の前にある問題に対処するための実践的スキルと、自分の物の見方を変え、人格的成長につながる内面的ワークです。前者だけならその場はしのげても、内面的成長にはつながらないかもしれません。後者だけでは、目の前の状況に対処するすべはないままに
なってしまいます。ですから、この両方を組み合わせつつ練習していくことが非常に大切なのですが、著者のガイドに従っていけば、それをバランスよく行っていくことができます。本書はコンパクトにまとめられており、仕事や子育てで忙しい人たちでも、気軽に読めます。しかし、だからといって、内容も薄いわけではありません。アンガーマネジメントとは何か、怒りの感情とは何か、といった基礎となる概念の解説が冒頭になされ、スキルを段階的に積んでいける構成になっています。参考文献も随所に掲げられており、もっと深く学びたい人はそれを参照できます。
さらに、リアルな事例マンガもあり、理解の助けになるのはもちろんのこと、まるでこちらの事情をお見通しの上で寄り添ってくれているかのようで、とても励まされます。著者ご自身の体験談もふんだんに盛り込まれ、思わず「あるある」とニンマリするかもしれません。本書に出てくる事例は子育てが中心ですが、夫婦関係やほかの場面での怒りの問題にも適用できます。自分用に一冊、プレゼント用にも何冊か購入したい本です。