書評Books 教会も離婚の問題を直視し、それに対応することが求められる 離婚から立ち直る―心の傷と痛みからの解放

教会も離婚の問題を直視し、それに対応することが求められる

日本同盟基督教団 蛍池聖書教会 牧師  森田悦弘

『離婚から立ち直る―心の傷と痛みからの解放』
エリック・カステンスキールド 著
立山千里/高辻美恵 訳

四六判 2,000円+税
いのちのことば社

本書には著者自らの離婚経験を通して体験した人間関係の破綻から来る鬱、不安、孤独、怒りといった心の痛みや問題を、「人生の立ち直り」というコースに参加することによって回復したプロセス(過程)と回復のための対処法が、十以上の豊富な事例とともに記されています。
現代は社会のみならず教会の中でも離婚の問題を直視し、それに対応することが求められています。人間関係や心の問題に対しては、予防的な対処と臨床的な対処、どちらも必要です。予防的な対処(例えば、幸せな結婚生活を送るための学びや聖書的な夫婦のあり方を学ぶ等)は有益で、その学びによって将来、大きな問題を回避することができるでしょう。
しかし今日、離婚のような実際的な問題や心の痛みを抱えている人に対しては臨床的な対処が必要です。本書は著者を含めて多くの事例をあげながら、実際的な対処の仕方を紹介し、教えています。何よりも「人生の立ち直り」のコースによって、この十年間の間に千人以上の人たちが回復、あるいは人生の局面にうまく対応できるようになったという点は高く評価されるべきでしょう。また著者が離婚という課題に健全に対処できたがゆえに、離婚前よりも人間的に成長できたと述べていることに「罪の増し加わるところには、恵みも満ちあふれました」(ローマ5・20)のみことばを思わされます。臨床心理的、またはカウンセリング的なアプローチに必要な事項はほぼ入っていると思いますが、その限界や危険性(スーパーバイザーや専門機関との連携等)、一人で実践することは難しいので研修と交わりのグループの必要性、こういった面は今後、整備される必要があると思います。
ただ、かつて米国で心の問題を抱えた人々が教会に助けを求めた際、教会の対応が遅れ、あるいは無視された結果、一般社会で回復プログラムや自助グループが急激に発達し、教会の支援が後手にまわったという歴史があります。教会は「実際的必要」にも目を向けるべきかと思われます。ぜひ、一読をお勧めいたします。