書評Books 自分の中に燃えている「良心の声」に従って あなたを諦めない―自殺救済の現場から

ミッション・エイド・クリスチャン・フェロシップ(MACF) 牧師 関根一夫

『あなたを諦めない―自殺救済の現場から』
藤藪庸一 著
四六判 1,400 円+税
フォレストブックス

著者である藤藪庸一牧師は神学生のころ、当時同じ神学校で学んでいて後の伴侶となる亜由美さんと一緒に私たちの教会で奉仕神学生として四年間過ごしてくださいました。彼には夢があり、意志があり、信仰があり、そしてスポーツマンの学生でした。白浜での牧師生活の中での働きが実を結んでいることを本当にうれしく思い、応援しています。
さて、この本は現実の出来事であり、その厳しい現実の中で何を感じ、どう生きてきたかという牧師の記録です。亜由美さんの知恵や助け、また義理のお父様からの助言も受けながら、自分の中に燃えている「良心の声」に従って未知の世界に足を踏み出し、必死になって、人の存在といのちの価値を信じ、諦めずに寄り添い続けている男の告白です。
そもそもどこから始まったのか、ということについても、興味深いエピソードが語られています。牧師就任以来、九百人以上の人たちの自殺を防止し、彼らの自立を支援し、食事の宅配サービスをはじめ、不登校の子どもたちのケア、そして寄宿生の学校を建てたいというビジョンまで「あなたを諦めない」気持ちがどこまでもあふれています。読んでいて心が温かくなります。でも、自分の弱さ、だめな部分もちゃんと吐露してくれています。彼はスーパーマンではありません。愛用の革の鞄をぶら下げながら、彼は今日も忙しく人に寄り添っていることでしょう。愛犬との散歩も忘れません。
自殺防止というと、なんとなく他人事のように聞こえてしまうかもしれません。でも、死を選びたいと感じている人の数は、少なくありません。つまりこの国には藤藪牧師のような生き方の人たちがたくさん必要なのだと思います。最終章の「あなたにもできることがある」という項目は超お薦めです。これを読むだけでもこの本の価値があると思います。
どう生きていったらよいのかわからないと感じている人、人との関わり方に自信のない方にもぜひ、読んでほしい本です。心から推薦します。