野の草を見つめながら 第10回 それぞれのレース

フォトグラファー 市川五月

今回の表紙の写真は、コンクリートの狭間で一生懸命生きている野の草を選びました。いつの間にか自分と人を比べすぎて、つらくなってしまったいつかの自分を投影しているような草でした。
人と比べてしまうのは、人間にはよくあることですが、特に日本人はその傾向が強いような気がしています。根本は、人と同じようにしなければいけないという教育からきているのかもしれません。
それに息苦しさを感じてか、いろいろな理由があるにしても、若者の自殺が増えており、その数は世界一というのが悲しい現状です。
高校3年生のときに通っていた教会で、初めて「人と比べなくていい」「あなたは神様の最高の作品だ」と教えてもらいました。その言葉にどんなに救われたかわかりません。初めて自分のアイデンティティーを確立できたような気がします。
ちょうど進路について考えなければならなかった時期に、それを教えてもらえたことは、将来の職業を決めていくうえでとても役立ったように思います。
ある人が教えてくれた言葉を、今でもよく思い出します。「人はそれぞれのレースを走っている。あなたにしか走れないコースで、他のコースに行くこともできない。みんなそれぞれのコースを一生懸命走ればいい」
周りの人々は、実はみんなそれぞれのレースを走っているのだから、比べる必要がないのだと気づかされました。
今日を頑張って生きている仲間や家族、教会の神の家族と励まし合って、2019年の残りの期間も過ごしていきたいと思います。
*      *       *
「兄弟たち。私は、自分がすでに捕らえたなどと考えてはいません。ただ一つのこと、すなわち、うしろのものを忘れ、前のものに向かって身を伸ばし、キリスト・イエスにあって神が上に召してくださるという、その賞をいただくために、目標を目指して走っているのです。ですから、大人である人はみな、このように考えましょう。もしも、あなたがたが何か違う考え方をしているなら、そのことも神があなたがたに明らかにしてくださいます。」(ピリピ3:13―15)