302 時代を見る眼 生きづらさを抱えた若者を どう受けとめるのか [2] 場面転換の不思議

K2インターナショナルグループ チャプレン 坂本 牧裕

ひきこもりの原因を尋ねられることがあります。しかし私たちは、原因探しの旅に出ようとはしません。学校や職場でのいじめ、友人から言われた何気ない言葉、人間関係のトラブル、話を聞いてくれない母親、仕事で忙しい父親……と、数年前、数十年前の原因を知る・探ることが、その人やその家族にとって、将来への希望を見いだすことになるでしょうか。
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イエスさまが生まれつき目が見えない人と出会ったときの話です(ヨハネ9章参照)。弟子たちは「先生。この人が盲目で生まれたのは、だれが罪を犯したからですか。この人ですか。両親ですか」と原因を知ろうとしてイエスさまに質問をしました。
しかしイエスさまは、「この人が罪を犯したのでもなく、両親でもありません。この人に神のわざが現れるためです」と語られました。
ひきこもりの原因は、その人でもあの人でもない。イエスさまは、このことを通して神さまの素晴らしさを現すためだと、私たちに希望のメッセージを語っておられます。
つらい状況からひと休み。しかし休みすぎてしまい、起き上がれなくなってしまった彼らと、またその家族たちと、私たちはこれからどうしようかと一緒に悩み、一緒に考え、一緒に歩んでいくことで、希望を見いだしたいと考えています。
そのためには、彼らの「生活環境」「生活習慣」「人間関係」を変えて、神さまの素晴らしさを現すために、新しい一歩を踏み出す「場面転換」が必要となります。
目の見えなかった人の目に泥を塗られたイエスさまは、彼に語りかけました。「行って、シロアム(訳すと、遣わされた者)の池で洗いなさい。」
新たな場面転換をするように、イエスさまは「行きなさい」と語られました。そして生活環境、生活習慣、人間関係を新たにするために、古きものを「洗いなさい」と言われます。
K2の支援の中心は共同生活です。場面転換をするために、私たちは生きづらさを抱えた若者たちと共に生活をし、共に生き、働く場を提供しています。
生きづらさを抱えた若者たちが、与えられている場所で笑いながら生きる姿の中に、「神のわざがこの人に現れるため」と語られた、イエスさまの素晴らしさが現されているのです。
―眼前のもっとも生きづらさを抱えた若者にキリストを見る―。