書評books わくわく待ち望む救い主の誕生

日本福音キリスト教会連合・前橋キリスト教会牧師夫人 内田みずえ


『クリスマスのよる 星たちのうた』
サリー・ロイド・ジョーンズ文
アリソン・ジェイ 絵
A5変型判 1,000円+税
いのちのことば社

暗い空に瞬く星たちの澄んだ歌声が空全体に響き渡り、山を越え、野を越え、海を越えて、心の耳に届いて来るようなタイトル。動物や鳥たちは輪になって、ひとつの星を見上げて耳を傾けています。表紙をめくると、動物たちが一列になって星に導かれて進んで行きます。
木の葉をさらさら揺らせた、その「知らせ」が歌となって丘を越えて行くと、林の中の木々や森の生きものたちがわくわくとした表情で動き出します。天と地と海と、そこに住む生きものたちが、次々とバトンを渡します。「もうすぐだよ! もうすぐだよ!」力強く駆ける馬が「よろこぶじゅんびを しなさい!」といななくと、百獣の王が「ちからある おうさま! へいわのかみさま!」と吠えます。
それを合図のように天で星が歌い始めます。「あかるい よあけの ほし!」 丘の上の羊たちが待ちわびる中、大勢の天のみ使いたちの歌声が鳴り響きます。「もうすぐ、あのかたが こられます!」
星の光が注がれている小さな小屋で「せかいの すべてを てらす ひかり」が現れました。被造物全体が待ち望んでいた「救い主の誕生」です。旅をして来た動物たちが、その幼子を優しい眼差しで囲みます。
神様がその昔から持っておられた遠大なご計画。長きにわたって、旧約聖書の多くの預言者を通して語ってこられた、人類を罪から救う「救い主の誕生」。それを、簡潔なことばで表現し、読む者の心に迫ることのできる力がみなぎっている絵本です。
ひらがなだけの短いことばの背後には、あの箇所、この箇所を思わせる「聖書のことば」が重厚な和音として響いています。イラストレーターの深い理解と洞察に裏打ちされた、柔らかいタッチ、細かい描写、そして心憎いばかりの構図が、この絵本に深みと広がりを与えています。
今年のアドベントの過ごし方が変わりそうな予感がします。「救い主の誕生」を待ち望むって、こういうことだったのですね。